独占禁止法の改正案の審議を!
2008年11月25日
独占禁止法の分野、もしくは競争法の分野での大きな動きが、報道されている。たとえば、カルテルの取り締まりについて11月に入って同時期に次のような報道がなされた。
(1)日本では、公正取引委員会が、溶融亜鉛めっき鋼板に係る価格カルテル事件で、3社を刑事告発したと報道されている。なお、価格カルテルの刑事告発は、1991年11月の業務用ストレッチフィルムに係る価格カルテル事件の刑事告発以来である。
〔公正取引委員会のHP、日経新聞(2008年11月12日)等〕
(2)EUでは、欧州委員会(the European Commission)が、自動車用ガラスの価格カルテルにつき、4社に対して、総額で約13億8400万ユーロ(約1700億円)の制裁金の支払いを命じたと報道されている。
〔欧州委員会のHP、日経新聞(2008年11月13日)等〕
(3)米国では、液晶パネルの価格カルテルにつき、3社が、総額5億8500万ドル(約550億円)の罰金の支払いを、司法省(the Department of Justice)と合意したと報道されている。
〔米国司法省のHP、日経新聞(2008年11月13日夕刊)等〕
これらは、世界的に独占禁止法・競争法の適用が強化されてきている現われであろう。この強化の傾向にあわせて、日本では、公正取引委員会による取り締まりを強化するだけではなく、その活動のもとである「独占禁止法」を強化しようとしている。強化のための独占禁止法の改正案が、国会に提出されている。この改正案では、1)課徴金の適用範囲の拡大、2)主導的役割を果たした事業者に対する課徴金の割増、3)摘発などに対する効力が期待されている課徴金減免(リニエンシー)制度の拡充などが含まれている。
そこで、この改正案の審議等の状況を見てみると、今年の通常国会(第169回国会)に提出されたものの成立するに至らず、継続審議とされ、今の臨時国会(第170回国会)に提出されている。しかしながら、現段階では、審議が進められて、成立するという見通しが立っているわけではない。国会では他の懸案事項が山積みであろうが、この改正案は世界的な独占禁止法・競争法の適用の強化の方向に沿うものであり、早急なる審議を願わずにはいられない。
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- 執筆者紹介
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堀内 勇世
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