ケータイとCGMと教育

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2008年06月12日

  • 櫻岡 崇
インターネット利用は私たちの生活に広く浸透してきているが、その入り口となる端末もPCだけではなくなってきた。現在、その主たる端末は若年層になるほどPCではなく、ケータイとなっている。

ケータイは、電話以外の様々な機能を持つようになり、PCでインターネットを始めた大人の常識的な視点とはかなり違う使い方をする人たちが現れてきた。それが社会的な問題となるケースが出ている。今後、テレビやゲーム端末などインターネットの入り口が益々多様化することを考えれば、ケータイで顕在化した問題はほんの一握りと言えるかもしれない。

インターネット利用をPCから始めた大人の層は、当該インフラを使うことによる情報閲覧やコミュニケーションのタイムシフトという要素を強く意識してきたと考えられる。しかし、ケータイの世界ではこれにロケーションシフトが加わる。そのため、情報取得やコミュニケーションに対するオンデマンドの行動が取りやすい。これが、本来非同期の媒体と考えてきたネットに同期性を求める要因となる。もちろん、これによって良い意味で新たな媒体価値を生む機会がある。しかし、一方で間違えたネットの使い方に繋がる可能性も出てくる。

PCでインターネットが始まった頃、いわゆる「ネチケット」という言葉を頻繁に聞いたのを懐かしく思う方も多いだろう。最近では、こうした言葉が明示的に聞かれることは少なくなったが、CGM(Consumer Generated Media)などコミュニケーション活動が密になるネット媒体ほど、ユーザー行動のマナーが媒体価値に与える影響は大きく、重要性は変わらない。

フィルタリングなど、未成年者を有害なネットコンテンツから隔離してしまう方法も活発に議論されているが、それが本質的な解決策にならないことは、皆うすうす感じているのも確かである。

学校裏サイトと呼ばれる、非公式に学校に関する情報の交換を行う掲示板は、典型的なCGMである。使い方さえ間違えなければ、生徒たちがより良い学校生活を楽しむためのツールとなり得るものでもある。

インターネットの利用を開始する若年層にとって、単に行ける場所を少なくするだけでは、活動の幅を狭め、日本のネットビジネスにおける新たなイノベーションの芽を摘んでしまう可能性がある。どのように行動すべきかを教え、ルールを破れば注意をしてあげるような場が必要である。学校裏サイトとは、むしろ積極的にネット教育の場として活用すべきものであり、そのための学校の取り組みを支援する必要がある。それは政府だけでなく、ネット業界全体に課せられた使命ではないか。

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