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「知らなかった」では済まされない

2008年05月23日

池田 太郎

組織内の重大な不正が明らかになるたび、記者会見で経営者が「知らなかった」と釈明する姿を目にする。言外に「組織ぐるみではない」と言っているようにも見える。しかしながら、そもそも重大な不正が社内で発見されず放置されていたこと自体、経営者として責任を免れないことを銘記すべきである。

最近は経営者にもこのような意識が浸透してきた。重要な意思決定に必要な情報や、自社の問題点が十分に己に伝わっていないのではないかという不安を持っている場合が少なくない。特に、組織が急激に拡大し、従来のように社内が見渡せなくなってきている経営者にその傾向が見られる。近年導入が進んでいる内部通報制度は、そうした経営者の意識を反映した仕組みともいえよう。

しかし、「問題があっても指摘しにくい等の組織構造や慣行がある」、言い換えれば「風通しが悪い」場合には、いかにルールを定め仕組みを構築してもそれが有効に機能せず、重要な情報が経営者に上がってこない。その結果、経営上の重要な判断を誤ったり、対応が遅れたり、全体最適に至らないなどの弊害が生じやすくなる。「風通しの悪さ」は、たとえ社内の誰もが認識していても、改善は容易でない。まず、重要な問題点が経営層に伝わっていないという事実を、例えば内部監査(独立的モニタリング)や内部統制報告制度における業務プロセス統制評価の中であぶりだす。その原因が「風通しの悪さ」であれば、組織や人事評価制度の見直しをはじめ、具体的な対応策とその実行が必要になる。

内部統制報告制度における「全社的な内部統制」の評価項目例には、「経営者は、問題があっても指摘しにくい等の組織構造や慣行があると認められる事実が存在する場合に、適切な改善を図っているか」という項目がある。また、「内部統制に関する重要な情報が円滑に経営者及び組織内の適切な管理者に伝達される体制が整備されているか」という項目もある。どちらも財務報告の重大な虚偽記載を防止するための評価項目として挙がっているものの、経営そのものにとっても不可欠の視点であろう。

内部統制報告制度において「全社的な内部統制」をしっかりと評価することは、財務報告に限らず、経営そのものの改善に結びつく。形式的なチェックリストの作成で済ませることなく、経営の本質的な問題点を明らかにするための手段として、ぜひ積極的に活用していただきたい。

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