重要性を増す中国の温暖化防止への取り組み
2008年01月11日
先月(2007年12月)にインドネシアのバリ島において「国連気候変動枠組み条約国締約国会議」(COP13)が開催されたことは記憶に新しい。温室効果ガス削減に向けた数値目標こそ定められなかったが、地球温暖化防止のための地球規模での枠組みの構築に向けて新たな一歩を踏み出した。今年2008年は京都議定書において取り決めがなされた温室効果ガスの排出削減に向けた約束期間の最初の年であり、地球温暖化防止に向けた世界各国の本腰を入れた取り組みが求められている。
ここに来て重要性を増しているのが、2007年に世界最大の排出国になったといわれる中国(※1)の動向である。中国は07年6月に「気候変動に対する国家プラン」、「気候変動に対する科学技術特定項目(に関する)行動」、同9月に「再生可能エネルギー中長期発展計画」を策定し、同10月に省エネルギー法(改正)を公布した。数値目標を定め(※2)、目標達成のための施策も盛り込まれており、中国が省エネルギー化の進展などにより地球温暖化防止に取り組むことを国内外にアピールしている。
これらの事例だけで判断すれば、中国もようやく重い腰を上げて地球温暖化問題に取り組み始めたと言える。しかし、中国は13億人近い人口を抱え、今後も工業化やモータリゼーションの進展が予測されるため、温室効果ガスの総量での排出削減には相当な努力が求められよう。
そこで重要となるのが、日本をはじめとする海外との国際的な環境協力だ。日中間では「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」など環境協力に関する会合が持たれており、昨年12月の福田康夫首相の訪中時にも両国の環境協力があらためて確認された。日本の技術を移転、活用することで中国の省エネ・環境対応の基盤作りが進むと同時に、日本企業もビジネス面での恩恵を受けることは望ましい流れであると言えよう。
ただ、懸念されるのは日中間の環境協力の重要性が「ビジネスの延長線上」として捉えられ、環境技術の導入にのみ目が向けられてしまうことだ。優れた環境技術の導入は、エネルギー効率の改善に寄与するという効果を持つ。しかし、温暖化防止のためには効率の改善に加え、「総量」での温室効果ガスの削減が必要となる。そのためには、政府・企業・個人を問わずあらゆる主体が自らの行動と環境との関わり方を見直すことが不可欠である。
すなわち、環境技術の飛躍的な向上にとどまらず、低炭素社会構築に向けた社会システムの変革を同時に行うことが求められている。後者については、まさに日本が直面している課題でもある。両国が緊密に連携したうえで、50年、100年先を見据えた「環境との共生モデル」を構築することが求められていると言っても過言ではないだろう。
(※1)IEA(国際エネルギー機関)が2007年に公表した「World Energy Outlook 2007」のエグゼクティブサマリーより。
(※2)「気候変動に対する国家プラン」では、2010年の単位GDPエネルギー消費量を2005年比で20%削減し、二酸化炭素の排出も相応して抑え、「再生可能エネルギー中長期発展計画」では、1次エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの比率を2005年の7.5%から2020年に15%に引き上げるとしている。
ここに来て重要性を増しているのが、2007年に世界最大の排出国になったといわれる中国(※1)の動向である。中国は07年6月に「気候変動に対する国家プラン」、「気候変動に対する科学技術特定項目(に関する)行動」、同9月に「再生可能エネルギー中長期発展計画」を策定し、同10月に省エネルギー法(改正)を公布した。数値目標を定め(※2)、目標達成のための施策も盛り込まれており、中国が省エネルギー化の進展などにより地球温暖化防止に取り組むことを国内外にアピールしている。
これらの事例だけで判断すれば、中国もようやく重い腰を上げて地球温暖化問題に取り組み始めたと言える。しかし、中国は13億人近い人口を抱え、今後も工業化やモータリゼーションの進展が予測されるため、温室効果ガスの総量での排出削減には相当な努力が求められよう。
そこで重要となるのが、日本をはじめとする海外との国際的な環境協力だ。日中間では「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」など環境協力に関する会合が持たれており、昨年12月の福田康夫首相の訪中時にも両国の環境協力があらためて確認された。日本の技術を移転、活用することで中国の省エネ・環境対応の基盤作りが進むと同時に、日本企業もビジネス面での恩恵を受けることは望ましい流れであると言えよう。
ただ、懸念されるのは日中間の環境協力の重要性が「ビジネスの延長線上」として捉えられ、環境技術の導入にのみ目が向けられてしまうことだ。優れた環境技術の導入は、エネルギー効率の改善に寄与するという効果を持つ。しかし、温暖化防止のためには効率の改善に加え、「総量」での温室効果ガスの削減が必要となる。そのためには、政府・企業・個人を問わずあらゆる主体が自らの行動と環境との関わり方を見直すことが不可欠である。
すなわち、環境技術の飛躍的な向上にとどまらず、低炭素社会構築に向けた社会システムの変革を同時に行うことが求められている。後者については、まさに日本が直面している課題でもある。両国が緊密に連携したうえで、50年、100年先を見据えた「環境との共生モデル」を構築することが求められていると言っても過言ではないだろう。
(※1)IEA(国際エネルギー機関)が2007年に公表した「World Energy Outlook 2007」のエグゼクティブサマリーより。
(※2)「気候変動に対する国家プラン」では、2010年の単位GDPエネルギー消費量を2005年比で20%削減し、二酸化炭素の排出も相応して抑え、「再生可能エネルギー中長期発展計画」では、1次エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの比率を2005年の7.5%から2020年に15%に引き上げるとしている。
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