リセッションの確率
2007年12月17日
振り返ってみれば、グリーンスパン前FRB議長が“年内にリセッションが始まる”、“その確率は1/3”と述べたのは今年の2~3月のことだ。世界同時株安を招く一因になったという批判があったし、現職のバーナンキ議長の景気認識“緩やかな成長が続く”との違いも話題になった。
そして、年央にかけて、市場では楽観的な景気見通しが強まったことから、年内の金融緩和予想が後退し、大方は政策金利の据置きに収斂していった。なかには、来年を通じて据置きという大胆な見通しを、早々と示した機関も登場した。その豹変ぶりに驚いた記憶はあるが、実際9月以降の利下げ局面になると、一転して、どこまで下げるかを争っている感じだ。柔軟な発想や手の平の返し方を学ばなければと思うが、決して市場関係者だけが見通しを修正したわけではない。Fedが公表したメンバーの08年(Q4の前年同期比)の成長率予想は、6月時点の2.5~3.0%から10月時点には1.6~2.6%に大幅に引き下げられた。しかも、そのレンジが広いだけでなく、見方がほぼ均等に分布していたために、不透明性を印象付ける内容となった。
リセッションをマイナス成長と定義するならば、前述の市場コンセンサスやOECDの数字とリセッションの間には、まだ乖離がある。では、リッションに陥る条件はなんであろうか。まず、住宅市場では住宅価格の下落率が20%超える。そして、2000年以降住宅資産とのリンクを強めてきた消費においては、富裕層の支出パターンが変化すること。民主党の急進的な政策が影響するかもしれない。企業活動では、構築物投資が大幅な調整局面に入る、企業の二極化が一段と進み保護主義的な動きが強まる等が懸念される。後者の場合は、企業が国内の採用を手控えることも背景にあるだろう。そして、牽引役の輸出にとっては、海外景気の変調はネガティブである。なお、必ずしもこれらの条件が同時に成立するとは限らない。
2008年は子年である。過去60年間の米国の成長率をみると(07年は市場コンセサスを使用)、子年の平均成長率は4.60%と十二支のなかで最も高く(最高と最低を除いた3年分で比較しても、子年は寅年に次いで2番目に高い。ちなみに、60年間の平均成長率は3.41%)、逆に最も低い戌年は0.83%に過ぎない。また、子年の株価(S&P500)でも、1948年を除いて各年12月はその年の高値圏で引けている。来年の今ごろ、著者も含めた市場コンセンサスの見方に反した結果を目にすることを祈るばかりである。
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