社会医療法人債

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2007年04月17日

社会医療法人

2006年6月14日成立した「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(※1)」(同月21日公布)により、今年4月1日から「社会医療法人(※2)」という制度が創設された。社会医療法人とは、病院などの運営を目的とする法人である医療法人のうち、一定の公的要件を備え、都道府県知事より認定を受けたものである。社会医療法人は、小児救急医療、災害医療、へき地医療等の公益性の高い医療を行うことが義務付けられている。赤字経営が続く自治体病院などの公的医療機関の受け皿となることが期待されている医療法人である。

このような社会医療法人は、資金面で困難な不採算を伴う事業を担うことになる。そこで、経営基盤の安定化を図る目的から、厚生労働大臣が定める収益業務(※3)を行うことも認められている。また、これまでの間接金融による資金調達のほか、「社会医療法人債(※4)」の発行による資金調達を認めることで円滑な資金調達を可能としている。

証券取引法との関係

この社会医療法人債は、証券取引法2条1項3号の「特別の法律により法人の発行する債券」に該当し、証券取引法の有価証券であると解釈される。これにより、自動的に証券取引法の開示規制(ディスクロージャー規制)が及ぶのかというとそうではなかった。証券取引法3条により、原則として、「特別の法律により法人の発行する債券」は、証券取引法の開示規制が免除されるという状況にあった。しかしながら、これでは、投資家保護の観点から不十分ではないかと考えられた。この社会医療法人債は、私法人の発行する債券であり、社債券と同様、広く流通することを前提とされていたからである。それ故、投資家保護の観点から、開示規制の対象とする必要があるとされた。

そこで、金融庁は、証券取引法3条の“「特別の法律により法人の発行する債券」であっても、「企業内容等の開示を行わせることが公益又は投資者保護のため必要かつ適当」であれば、証券取引法施行令(政令と呼ばれる法令)で指定し証券取引法の開示規制の対象にできる”という規定を利用することにした。具体的には、証券取引法施行令を改正し、改正後の2条で社会医療法人債を開示規制の対象に指定し、4月1日から施行した(※5)

また、併せて「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」などの内閣府令を改正し、これも4月1日から施行した(※6)

(※1)詳しくは厚生労働省のウェブサイト参照

(※2)(※3)医療法42条の2参照。

(※4)医療法54条の2参照。

(※5)(※6)詳しくは金融庁のウェブサイト参照。

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