新商品投入の2つの事例
2006年12月20日
ケータイ白書2006によれば、2005年においてテレビ電話を「ほとんど利用していない」は、前年の75.5%から82.7%へと増加、「日常的に利用している」のはわずか1.9%にとどまっている。
同じく2年前、私が使っているJR線にグリーン車が連結された。グリーン料金は、事前購入でも750円と高い。それからどうなったか。グリーン車両の前後の車両、さらにはその隣が一際ぎゅうぎゅう詰になったのだ。中には、乗り切れない人も出てくる始末。
まあ、この結末は至極当然で、全体の車両数が変わらない中で、一部をスカスカのグリーン車両に入れ替えれば、他の車両が混むのは小学生にもわかる話である。勿論、朝にもグリーン車は走っている。そして、ご丁寧にも常に一番混む位置(階段付近など)に連結されている。乗り遅れまいと階段を駆け上ったら、目の前がグリーン車で、あわてて前後の車両に行ったらすでにオーバーフローして乗れない、という悲劇が待っていた。
この新サービスも失策だ・・・と、思っていた。ところが今は、そのグリーン車が、毎朝満席状態である。満席どころか、すぐに座れないと分かっているのに、それでもホームでグリーン券を購入する人が並んでいる。また、前後の車両のすし詰め状態もなくなって来た。
この2つの事例、基本的には、顧客数がそれほど増えない中で、如何に売上単価を上げるかの方策ではあるが、もちろん、事業環境は異なるし、その新サービスの目的も実は異なるのかもしれない(前者の事例は、サービスの利用よりもそれによる顧客獲得が狙いだった可能性もある)。とは言え、売上単価上昇と言う観点からは、前者の施策は不十分であり、後者は成功した。
「新商品の投入には、顧客ニーズの分析が重要で云々・・」などと、いまさら言うつもりは無く、ことほど、消費者のニーズをつかむこと、それを踏まえて新商品、新サービスを成功させることは難しいものだと実感する。こうした中では、消費者のニーズを捉える方法論をより追及するばかりでなく、このような不確実性は避けられないという大前提に立つことが重要であろう。したがって、肝心なことは、失敗することを前提として今後の推進の判断を迅速に下すことであり、そのためには、まずは実行することではないだろうか。そして経営者は、それを可能とする組織形態、組織運営を作り上げることが重要となる。
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