高まる「新たな公益法人等の会計処理に関する研究会」への期待
2006年12月04日
第1回配布資料に掲載されている検討スケジュール(案)をみると、検討内容とその時期がわかるが、このなかで筆者が特に注目するのは、12月からの予定となっている「公益目的事業費比率の算定方法」と「遊休財産の判定方法及び遊休財産額の算定方法」である。公益認定基準には、平易に表現すると、公益目的事業比率が事業全体の50%以上と見込まれること(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条第8号、同第15条)、許容される遊休財産額は費用一年度分を基礎として計算された額であること(同第5条第9号、同第16条)が挙げられているが、両者とも内閣府令で定める文言を含み、非常にわかりづらいつくりとなっているのである。
これらを多くの会計の専門家を含む当該研究会で検討することで、明解な基準がでてくることが期待されるところであるが、十分な説明力を有する結論を導き出すのは容易ではなかろう。ざっくりというと、法では公益目的事業比率は、公益目的事業費を分子とし、公益目的事業費と収益事業等費用と経常的経費を分母とするものであるが、経常的経費を他の2つとどう区別するのかが難しい。例えば、公益目的事業と収益事業の両方を行っている場合で共用する管理費部分などは経常的経費とするのか、両者の大小でどちらかに入れるのか、按分するのかで大きく変わり得る。さらに遊休財産に関しては、何をもって“遊休”とするのかすら判然としない。現在は使用していないが将来使用する予定のある財産でも遊休財産に入るのか。もし、これが入らないとすれば使う予定の全くない財産となるが、そもそもそのような財産は存在するのかということになる。
今回の公益法人制度改革においては、主務官庁による曖昧な許可基準とは決別し、新たに設置される公益認定等委員会によって明瞭に認定が行われることが期待されている。確かに、会計面から公益目的で活動する法人を判定できるのであれば、非常に明瞭であるが、法が政省令次第で大幅に振れ得るつくりになっており、よほど慎重に行わないと極端な結果になりかねない。上の例でいえば、経費の多くを公益目的事業として認められるならば公益目的事業比率をクリアすることはかなり容易となり、何かに使うと宣言することで“遊休”でないとするならば、遊休財産額をゼロとすることさえ困難ではないであろう。会計処理の仕方次第で容易にその逆にもなり得るのである。どっちに転んでも批判がでそうな難しい議題ではあるが、誰もが納得できるような明確な結論が出されることを期待したい。
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