重要となる世界経済との連携

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2006年11月02日

  • 尾野 功一
結び付きが薄い日本
1990年代以降の世界経済を特徴付けるキーワードは「グローバル化」である。生産拠点が世界中に広がり、多国間で生産の分業を行うことで世界経済の相互 依存は深まり、国境を超える企業の合併・買収や国際的な証券投資は、今では珍しい現象ではなくなっている。

とはいえ、世界経済との結び付きは国ごとに濃淡が存在する。OECDに加盟する主要先進国について、名目GDPに対する財の貿易額(輸出と輸入の和)を求 めると、01年以降の平均ではベルギー、アイルランドの100%超を筆頭に、比較的経済規模の小さい大陸欧州諸国が高水準で、逆に経済規模の大きい米国 (19.3%)および日本(20.9%)は低い水準にとどまっている。また、自国(海外)企業の海外(自国)進出などが反映される対外(対内)直接投資残 高を比較すると、01年以降の平均で、日本は対外直接投資残高対名目GDP比が7.8%とギリシャについで低く、対内直接投資残高対名目GDP比となると わずか1.9%と圧倒的に低い水準となっている。

必要な連携の強化
他国との経済連携が重要と考えられるのは、世界経済の構図が変化しているからである。IMFのデータを基に世界全体に占める新興地域の経済規模の比率(※1)を求めると、80年代前半の40%強から徐々に上昇し、最近では50%を超える水準に達してい る。この変化は、東・東南アジア地域(※2)の成長でほぼ説明されるが、今後はこれらの国・ 地域に加えて、インド、ロシア、中東欧、中南米なども有望視されている。対照的に、人口減少社会に突入する日本は、世界経済に占める比重が相対的に低下す る可能性が高い。地理的に近いアジアでさえも、日本は貿易や投資を通じた経済的な結び付きが必ずしも強いとはいえず、今後比重が増すであろう新興地域およ び世界経済との関係を強化することは、日本にとってより重要なテーマになると思われる。

(※1)購買力平価換算の米ドル建て名目GDPベース。
(※2)アジアNIEs(韓国、台湾、香港、シンガポール)、ASEAN4(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア)および中国など。

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