資金不足に向かう企業
2006年09月12日
日本の非金融法人企業(以下、企業)の資金余剰(いわゆる金余り)は、急速に縮小しつつある。03年度と05年度とを比較すると、金額にして23兆円(35兆円→12兆円)、名目GDP比にして4.5%ポイント(6.9%→2.4%)もの縮小がみられているのである。近年の日本企業の大きな特徴であった金余りも、再び欧米諸国の企業並みの水準に近付きつつある、ということである。
「資金余剰が縮小しつつある」ということは、実物投資の増加分がキャッシュフロー(貯蓄)の増加分を上回り始めた、ということでもある。実物投資の中でも、とりわけ設備投資の増加傾向の強まりが大きく寄与している。更に、配当の支払が大きく増加し始めたことなども、金余り縮小の一因となっている。こうした中、早ければ2006年度中にも、企業が資金不足に至る可能性が視野に入りつつある。設備投資等実物投資の増加分がキャッシュフローの増加分を上回る傾向が続く公算が高いためである。
企業が資金不足に陥ったとき、金融市場に何か大きな変化が起こるだろうか。これまでの企業の資金余剰が金融市場に及ぼしてきたインパクトについては、様々な考え方がありうる。その一つとして、長期金利の低下に何らかの影響があった、という見方がある。実際、わが国において、企業の資金余剰と長期金利の間には、一定の関係が観察される。但し、企業の資金余剰の変化に対する長期金利の感応度はさほど大きいわけではない。そのため、かりに企業が資金不足になったとしても、劇的な長期金利の上昇が起きる可能性は低い。なお米国に関しては、企業の資金余剰の変化に対する長期金利の感応度は、日本に比べはるかに大きい。近年の米国企業は、そもそも大幅な資金不足に陥ることはなかったものの、企業の設備投資が今後の米国経済の牽引役の一つとして期待されていることを考えれば、そちらの方には一定の注意を払うべきであろう。
「資金余剰が縮小しつつある」ということは、実物投資の増加分がキャッシュフロー(貯蓄)の増加分を上回り始めた、ということでもある。実物投資の中でも、とりわけ設備投資の増加傾向の強まりが大きく寄与している。更に、配当の支払が大きく増加し始めたことなども、金余り縮小の一因となっている。こうした中、早ければ2006年度中にも、企業が資金不足に至る可能性が視野に入りつつある。設備投資等実物投資の増加分がキャッシュフローの増加分を上回る傾向が続く公算が高いためである。
企業が資金不足に陥ったとき、金融市場に何か大きな変化が起こるだろうか。これまでの企業の資金余剰が金融市場に及ぼしてきたインパクトについては、様々な考え方がありうる。その一つとして、長期金利の低下に何らかの影響があった、という見方がある。実際、わが国において、企業の資金余剰と長期金利の間には、一定の関係が観察される。但し、企業の資金余剰の変化に対する長期金利の感応度はさほど大きいわけではない。そのため、かりに企業が資金不足になったとしても、劇的な長期金利の上昇が起きる可能性は低い。なお米国に関しては、企業の資金余剰の変化に対する長期金利の感応度は、日本に比べはるかに大きい。近年の米国企業は、そもそも大幅な資金不足に陥ることはなかったものの、企業の設備投資が今後の米国経済の牽引役の一つとして期待されていることを考えれば、そちらの方には一定の注意を払うべきであろう。
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