データこそが重要なSOA(サービス指向アーキテクチャ)
2006年08月07日
米国金融機関では、これまでシステムの構築や導入が事業部門ごとに行われ、ITガバナンスがままならない状況が続いていた。SOA環境の導入は、そのような状況から全社的に統一したインフラや開発方法を導入することで、ITの開発や運用を制御し、効率を高めたいという狙いがある。このため、現状の情報システムを分析しそれをSOAに対応させる手順、今後利用するSOAに適した開発方法といった、プロセスにかかわる分野の関心が高くなっている。SOAの導入を契機に、ITと業務部門との関係を整理することで、ビジネス自体を「機能(サービス)の組み合わせ」で対応しようとする「サービス指向企業(Service-Oriented Enterprise, SOE)」を目指す動きすらも見受けられる。
このような話からは、米国の金融機関はすでに既存アプリケーションをサービスに分解し、今後はサービスを組み合わせて新たなアプリケーションを構築するといったことが、すでに成功裏に達成できているように思えるかもしれない。しかしながら、事例を聞けば聞くほど、これまでかなりの紆余曲折を経てSOA環境を導入してきており、未だ道半ばではないかと思えてくる。その理由は、各社のシステム構築事例に必ず含まれており、かつもっとも重要と説明されるのが「データサービス」だからである。
データサービスとは、企業内にある様々なデータを一括して取り扱うサービスである。複数のデータベースや各種システムが保有するデータを読み書きし、その結果を出力する。いわば、企業全体でひとつのデータベースを構築するようなものであり、有用度は非常に高い。ただし、構築に際しては、あらゆるシステムのデータを集約しそれらを十分に吟味・整理したうえで、適切なテクノロジーを用いて構築する必要がある。そのため、SOA導入の一環で片手間に行う、というレベルではなく、非常に時間のかかる作業になる。
SOAという言葉からは、いかに既存システムや今後必要なビジネスから「機能」を抽出してサービス化するかということに注目が集まりやすい。しかしながら、先人たちの経験から、SOAの導入の際にまず注目すべきするポイントは実は「データ」だったと考えられる。今後、SOAは日本企業でも導入されていくと思われるが、その際には字面から「サービス」ばかりに気を取られることなく、企業内に散在するデータにこそ、細心の注意を払うことこそが重要ではないだろうか。
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