ゼロ金利解除後のマーケット
2006年07月12日
7 月14日にも、ゼロ金利が解除されそうだ。需給ギャップの縮小を背景に消費者物価が上昇していることや、企業の景況感や設備投資計画が高水準であること に加え、株式市場が落ち着きを取り戻しているからである。政府首脳の一部は「ゼロ金利継続が望ましい」との旨の発言をしているが、これは解除観測に伴う長 期金利上昇を抑えたいからだろう。「デフレ脱却が視野に入り、ゼロ金利解除の条件は整いつつある」との認識はほぼ共通しているようなので、政府が日銀の政 策判断に異を唱えるようなことはなさそうだ。 今回、ゼロ金利が解除された場合、マーケットの反応は如何なるものとなるだろうか。ゼロ金利を解除し0.25%の利上げを行った2000年8月11日の ケースを振り返ってみよう。当時はゼロ金利解除を受けて株高、金利高、円高が進んだものの、長くは続かず、1ヶ月も経たないうちに株安、金利安、円安に転 じた。
なぜなら、(1)OECD景気先行指数の変化率が2000年1月から低下を続けるなど、すでに世界的に景気減速の兆しがあった、(2)米国株価 (S&P500)が同年9月から急速に下げ始めた、(3)日本の失業率は改善基調になく、消費者物価の下落率が拡大していったからである。当時は その後2000年11月を山に景気後退が始まり、日銀がゼロ金利解除後に追加利上げをすることなく、2001年2月に利下げ、3月には量的緩和政策の導入 に至った。 では今回はというと、(1)OECD景気先行指数の変化率はまだピークアウトしていない、(2)日米ともにイールドスプレッド(長期金利-株式益回り)は ▲1%台と2000年8月の水準よりも低く、株価が割安で下げにくい、(3)日本の失業率は改善基調にあり、消費者物価の上昇率が拡大しやすい。これらの ことから、今回は追加利上げの公算も高く、ゼロ金利解除後の株高、金利高、円高の持続性は高いように思える。「ゼロ金利解除が世界的な流動性縮小を加速さ せ、株安、金利安、円安を招く」との懸念は杞憂に終わるのではないか。 |
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