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中国は自転車時代に後戻りできないのか

2006年06月07日

肖 敏捷

中国のタクシー業界は原油価格急騰の直撃を受けている。運転手への補助金という従来の対応策も限界に達し、政府はとうとう料金引き上げに踏み切った。5万台のタクシーがある上海では、料金メーターの調整も終わらないうちにガソリン価格が再度引き上げられる有様で、運転手の悲鳴に同情せざるを得ない。タクシーに乗ると私は、運転手の愛想が良さそうであれば、原油高への徹底的な対抗策として自転車時代の復興を推進すべき、との持論を披露している。

2005年の都市部百世帯当たり保有台数は、自転車が120台、乗用車が3.4台と、数字の上では自転車が依然主流だが、日常生活でその必要性はどんどん低下し、多くの家庭で無用の長物になりつつある。バス、地下鉄、タクシーなど交通手段の多様化、マイカーの増加などを背景とする自転車の地位低下は、国民生活の質的な向上を象徴している。しかし、ここ5年間で乗用車は約1,000万台増加しており、このまま普及率が米国並みとなれば、数億台に必要な燃料の確保は、中国だけでなく地球規模の問題になるかもしれない。

そこで、地球資源の枯渇を防ぐには、やはり自転車に期待するしかない。将来的に米国を上回る世界最大の経済国となることが有望視され、「責任ある大国」を目指す中国が、国策として自転車の利用を奨励すれば、原油価格の高騰に歯止めをかけるのみならず、環境汚染、交通事故の減少などにも期待できる。

こんな私の持論に、ほとんどの運転手は「もう後戻りできない」との反応を示し、その理由として、政府が自動車産業という税収を支える大黒柱を手放すはずがない、都市開発が進んだ結果、バスで片道1時間以上かかる通勤が当たり前となっている現在、自転車通勤は狂気の沙汰、などを挙げた。確かに、中国人もアメリカ人と同様、モータリゼーションを楽しむ権利があり、自転車時代への回帰は妄想にすぎない。

だが、モータリゼーションの恩恵を受けているのはまだ一部だが、社会に対する破壊力は、原油価格の高騰だけでなく、時と場所を選ばない交通渋滞、青信号でも安心して渡れない道路、鳴り止まないクラクションの騒音など、既に広範囲に渡っている。中国が自転車と自動車、人間と自然、政治と経済などのバランスを図りながら、成長軌道を走り続けることに期待したい。

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