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格差について

2006年04月07日

清田 瞭

新年度が始まった。日本の雇用状況も久々に改善し、約60万人以上とも言われる希望に満ちた新社会人が誕生した。中でも、特に問題視されていた若年層(15-24歳まで)の完全失業率が8.7%と7年ぶりの水準に低下したのは朗報である。これは、景気回復に伴う労働需給の逼迫と「団塊の世代」の大量退職に対応するため、企業が採用方針を積極化してきているためであると思われる。

その一方で、最近所得格差をはじめ各種の格差に関する報道が増えている。確かに、通年採用が広がったとはいえ、未だに企業の採用は、新卒者が中心であり、いわゆる“氷河期”に就職時期を迎えた25-34歳の年齢層では、依然、フリーターが多く、正規社員への道も決して容易ではないと聞く。小泉首相の推進してきた構造改革の影の部分として、格差拡大が言われる所以である。

ただ、そう感じるか否かは、個人の主観も入るために一概に論ずることは難しい。この所得格差は、一月に内閣府が公表した「月例報告」では「主に高齢化と世帯規模の縮小の影響による『見かけ上の問題』」と説明され、国民の「中流意識」にも変化はなく、「統計からは確認できない」と結論づけられている。また、十年を越える経済の停滞時期を経て、不満のくすぶる大衆に「格差が大きくなったか。」と質問すれば、そのこと自体が既に回答にバイアスをかけている可能性も否定できない。

しかし、金融広報中央委員会の「家計の金融資産に関する世論調査」では貯蓄を保有していない世帯が24%あり、しかも単身世帯では41%にものぼると報告されている。前述のように、一般には若年層に低所得のニート、フリーターが多いことから、将来、さらに格差が拡大する懸念は看過できない。さらに、いくつかの調査によると、格差は若い時期から存在し、その後も拡大しながら、人生の終章に際して、生涯賃金や年金或いは、資産の差の形として顕在化すると言われている。さらにこのところの株式市況の好調さも“持つもの”と“待たざるものの”の差を広げているに違いない。

ただ、あまりに大きな較差は問題であると誰もが思っても、結果の平等を保障することはできない。社会として整えるべきは機会の平等であり、性別・年齢による差別を排除するなど限りなくこれを保障することなのである。

さらに欠かせないのは敗者復活の考え方だろう。まず、努力して成功した人が報われる社会をつくることが重要である。しかし、より重要であるのは、格差を克服するための制度である。一度ついた格差が固定化されれば、階級社会を産み出し、いずれ、社会の活力を失わせ、国として衰退していくことは歴史が証明している。全ての人に機会が平等に与えられ、失敗した人にも復活の希望と挑戦する勇気を与えることができる活力ある社会を構築することこそが我々の重要な使命である。このような社会の硬直化・固定化を防ぐためには、一連の構造改革及び規制緩和を避けて通ることはできない。その実効をあげるための努力はまさに始まったばかりなのである。

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