NY証券取引所 ハイブリッド市場の実験開始

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2006年04月05日

  • 吉川 満
(1) 3月22日、ニューヨーク証券取引所がハイブリッド市場の実験を開始した。米欧日の証券取引所、証券取引システムをめぐる覇権争いの動きの最新の局面であ る。最近まで手動の立会い取引が残っていたNYSEも本格的に改革に向かい始めた。NYSEの取引に、立会い方式と並んでマーケットメーク方式を取り入れ るなど抜本的な改革を指向している。日本の証券取引所にとっても、システムの改善に一層注力しなければならない一因となろう。

(2) NYSEの新しい取引手法は段階的に公開されていくが、6月末には全貌が明らかになり、市場の評価も定まる見通しである。米国証券取引委員会(SEC)の 発表文書は次の通り。

【即時リリース2006-41】SECは本日(3月22日)、NYSEのハイブリッド・マーケット案を認可した。この認可により、SECは従来からのフロ アでの入札取引と、性能強化型の自動化したトレーディング機能とを、統合できるようになった。

“SECは、よりすぐれたサービスを投資家に届けるために、新しいトレーディング・システムと新しい技術とを市場が採用することを支持する。”SECのク リストファー・コックス議長はそう語る。“同時に、いまや一般株主に対してパフォーマンスに責任を持つようになったわが国の主要証券取引所とともに、 SECは市場における競争が一般大衆投資家にとって最善のものとなるように、投資家保護への注力を強める。

ハイブリッド・マーケット・モデルのもとでは、次のような点で、従来とは市場の構造が大きく変わる。

NYSEの自動執行機能を拡大し、ダイレク ト+で受け入れられる注文の種類を増やし、NYSEの最良のビッド、もしくは最良のオファーの外側で根付けされ た流動性に対しても執行ができるようにする。
NYSEフロアメンバーによる参加を自動化し、フロアメンバーが電気 的に流動性を供給できるようにし、その流動性が自動執行のために利用できるようにす る。
スペシャリストが独自のアルゴリズムを作成できるようにし、これを 使って電気的に気配を出し、トレーディングもできるようにした。こうしたアルゴリズムに より、スペシャリストは市場に対する義務を自動的に果たし続けることができるようになる。

SECは最近、NYSEがハイブリッド・マーケットに移行することができるようになるために、なさなければならない多くのシステム改良のうち、一部のテス トを行うことを認可した。この認可により、ハイブリッド・マーケットの数ヶ月に渡る段階的初公開の幕は、期って落とされた事になる。NYSEは一般大衆に 対し、ウェブサイト(NYSE Group) において、段階的初公開について報じる予定である。6月末には、新取引システムに対する市場の評価も定まる見込みである。

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