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株高の先にあるもの

2006年03月07日

俊野 雅司

最近、ようやく株式市場が活況を呈し始めている。小泉内閣のもとでの構造改革が効果を挙げ始めているとか、企業の合理化努力が実を結び始めているとか、いろいろな要因が背景にあるものと思われる。いずれにしても、株高は、年金基金のような機関投資家にとっても朗報である。これらの機関投資家は、一般的に国内外の株式等にも分散投資を行っており、株高は、今年度末の決算にとって大きな支援材料になるものと考えられる。

21世紀に入ってから、日本では、年金制度に大きな変化がもたらされた。2001年10月からは確定拠出年金が導入され、2005年11月末時点の加入者数は、企業年金連合会のホームページによると167万人に達していると推計されている。この制度のもとでは、提示された投資メニューの中から、加入者自身が投資対象とその配分を決定することになっている。すなわち、加入者の自己責任のもとで年金資産運用が行われる仕組みが採用されている。運用状況を見ると、日本人は安全指向が強いことを反映して、大半の資産が元本割れの危険が少ない安全資産に投資されていると指摘されている。

この1年だけを見ても、投資対象として株式関連の商品を選択していたかどうかによって、年金資産額に大きな差が生じているものと思われる。もっとも、年金資産の運用は中長期的な観点から行うべきであって、一時的な資産額の変動に一喜一憂すべきでないことは言うまでもない。しかしながら、今後、日本経済がデフレ状態を脱却して、物価水準が上昇していくような展開になった場合には、安全資産と株式のようなエクイティ商品の期待収益には大きな差が出てくる可能性が高い。しばしば、株価は、数年先の経済動向を織り込んで形成されると言われる。その意味では、最近の株高は、今後、日本でも、多少のインフレが発生する可能性を示唆していると考えることもできる。

これまで、日本では、1999~2005年にかけて、年平均消費者物価指数は7年連続下落を続けている。このようなデフレ経済の中で、将来のインフレ発生リスクを見越して、資産運用を行っていくことは心理的にむずかしいかもしれない。しかしながら、予期せぬインフレが発生した場合には、債券のように名目元本しか保証されない確定利付き証券の価格は下落することが予想される。そのため、個人投資家の間でも、特に年金資産運用のように中長期的な観点から投資方針を策定していくことが要求される場合には、名目価値ベースの元本確保だけを目的とした過度の安全指向を見直し、多様な資産クラスに分散投資していくことを検討すべきではないかと思われる。

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