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米国の税制改革案が示唆するもの-株式の10%税率恒久化を!-

2006年02月22日

吉井 一洋

米国の税制改革案が注目を集め始めている。これは、大統領の諮問を受けた、超党派の委員会が2005年11月に公表したものである。税制改革案では、「簡素化された所得税プラン」と「成長と投資の税プラン」の2つが提案されている。いずれも税制を簡素化する点では共通しているが、利子・配当・株式譲渡益の課税方法に大きな違いが見られる。「簡素化された所得税プラン」では個人が受け取る配当は非課税、所有期間1年超の株式譲渡益は75%非課税、利子は通常の累進課税としている。一方、「成長と投資の税プラン」では、個人の受取利子、受取配当、株式譲渡益は15%の税率で課税することとしている。

わが国の政府の税制調査会(政府税調)では、米国の「成長と投資の税プラン」を金融所得課税一体化推進の論拠の一つとする模様である。しかし、このプランは法人段階での支払利子の損金算入をとりやめることを前提としている点に注意が必要である。株式は支払配当を損金算入できない。「成長と投資の税プラン」では、支払利子を損金不算入とすることで、株式による資金調達が借入等による資金調達と比べ不利にならないようにするという発想に基づいている。「簡素化された所得税プラン」の場合も、同様の考え方から、法人段階で調整措置がない分、配当非課税、株式譲渡益75%非課税として、個人段階での税率を利子に比べ軽減している。この点を見落として議論してはならない。

わが国の政府税調が提案している一体化は、金融所得の表面的な税率を20%に揃えることを主目的としている。米国のように、利子と配当・株式譲渡益について、法人・個人段階を通じたトータルの税負担の違いを縮小するという発想は無い。一体化のもう一つの柱である損益通算も非常に不十分なものに留まりそうである。このような一体化は、配当や株式譲渡益の課税強化に他ならない。現行の株式・株式投信の10%優遇税率を恒久化する方が、国策でもある「貯蓄から投資」の推進によほど効果があるのではなかろうか。

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