TOB制度見直し等の証取法改正法案
2005年04月15日
証取法改正へ
証券取引法の一部を改正する法律案(※1)」が国会(第162回)に提出された。この法案には、西武事件を受けた「親会社開示」や、ライブドアのニッポン放送買収をめぐる「公開買付(TOB)制度(※2)の見直し」も盛り込まれている。
改正の概要
まず、一つ目が「親会社開示」である。子会社が上場会社であって、その親会社が開示していない場合、親会社自身の情報の開示を証取法上義務付けるというものである。上場会社に親会社が存在する場合に、その親会社の株主・役員・財務等の状況はその上場会社の経営に大きな影響を及ぼし得るもので、その会社の経営状況等を把握する上で重要な情報といえる。しかしながら、現行の制度では、上場会社の親会社が継続開示会社でない場合、投資者がその親会社の情報を入手することは困難であった。先の西武事件を受け、このような現行制度の不備を是正するために改正が検討されている。
二つ目が「TOB制度の見直し」である。立会外取引(例えばToSTNeT-1(※3)など)のうち、相対取引に類似する取引については、買い付け後の保有割合が3分の1を超える場合にTOB規制を適用するとしている。現行の制度では、立会外取引はその使い方によって相対取引と類似した形態となるにもかかわらず、必ずしも規制対象となっていなかった。これを放置すればTOB制度の形骸化を招く恐れがあった。実際、ライブドアのニッポン放送買収の際にこの点が問題となり、本改正案に盛り込まれることとなった。
三つ目が「英文による継続開示」である。外国会社等について、一定の要件の下で、英文の開示書類による開示を認めるというものである。現在、わが国証券市場に上場している外国会社等は、毎年、日本語で作成した有価証券報告書を提出しなければならず、大きなコスト負担となっていた。それ故、上場に係るコストを軽減し、わが国証券市場の国際化・競争力の向上を図る目的で改正が検討されている。
(※1)金融庁のHP(http://www.fsa.go.jp/houan/162/hou162.html)参照。
(※2取引所市場外での上場株券等の一定の買い付け(買い付け後保有割合が3分の1超など)の際に、買付者に買付価格等をあらかじめ公告させ、株主に平等に売却の機会を与える制度。
(※3)東京証券取引所のHP(http://www.tse.or.jp/rules/tost/index.html)参照。
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堀内 勇世
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