復活する米国IPO

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2005年02月02日

  • 藤井 佑二
2004年の米国IPO(新規公開)市場は、年間を通じて活況に推移した。大統領選挙前の不透明感、利上げ、原油高などを受け株式市場の低迷が続いた中、件数では前年比132%増の304件、金額(公募・売出合計)では同60%増の732億ドルと、共に大幅に増加し(Thomson Financial調査)、01年以降続いていた低迷から大きく回復した(下図参照)。  
株価についても、新規公開銘柄は昨年、大幅な上昇を記録している。Renaissance Capital's IPOhome.com によると、昨年の平均上昇率は34%と00年以降では最も高く、80%以上の企業が昨年末現在で公募価格を上回ったもよう。また、上場初日の上昇率とその翌日から昨年末までの上昇率を比べると、翌日から年末までのパフォーマンスが初日を大きく上回っており、上場後も着実に株価が上昇した点が特徴的だった。

セクター別では、ヘルスケア、テクノロジー関連企業の上場が目立ち、中でも8月中旬に行われたGoogle(インターネット検索)の上場は大きな話題となった。ITバブル崩壊以降では久しぶりとなる大型インターネット企業の上場だった上、通常とは異なり、公開価格が入札方式で決められたためである。ただ、この入札方式の複雑さが敬遠されたことなどが影響し、当初の公開予定価格(108ドル~135ドル)は大幅に引き下げられ、結局、85ドルとなった。しかし、1)同社がネット検索サービスですでに世界最大手であったこと、2)01年にはすでに黒字化を果たし、企業のIT広告支出増大を受けて売り上げ・利益共に大幅に伸びていること、などが評価され、同社の株価はその後大きく上昇し、昨年末時点では公募価格の2倍以上高い水準となった(192.79ドル[04年12月31日終値])。

IPO市場において、同社のように上場前に利益を計上(黒字)している企業の占める割合は、ITバブル崩壊後高まり、00年の3割弱に対し、昨年は6割以上となったもよう。また、Venture Economics社によれば、昨年ベンチャーキャピタルの出資を受けて上場した企業のうち、8割以上がITバブル崩壊以前に出資を受けた企業であった。そのバブル崩壊後のリセッション(景気後退期)を耐え、着実に業績を伸ばした企業が多かったことも昨年IPO銘柄が好パフォーマンスを記録した背景の一つといえよう。

ITバブル崩壊以降、投資家の新規公開銘柄に対するマインドはいったん大きく冷え込んだ。しかし、この間、かえって新規公開銘柄の「質」は高まった。ITバブル当時に上場したネット企業がすべて赤字だったことを考えれば、昨年のGoogleは象徴的といえよう。そして、このGoogleをきっかけに投資家の関心は再び高まっている。企業の「質」向上と投資家マインドの改善によって、新規公開銘柄全体では今年好パフォーマンスが期待出来るだろう。

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