人手不足下における外国人雇用の課題

労働力確保と外国人との共生の両立には日本語教育の強化が不可欠

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2025年11月06日

サマリー

◆生産年齢人口が減少する中でも女性や高齢者の労働参加で就業者数は増加を続けてきたが、その恩恵を受ける産業には偏りがあり、今後女性の就業者数の増加は鈍化する見込みである。こうした点を踏まえて試算した結果、多くの産業で人手不足が一段と深刻になり、製造業の未充足求人数は2030年までに最大12.4万人増加する。省力化投資などを通じて生産性向上を図ることが不可欠だが、それでも不足する労働力は外国人労働者で補っていく必要がある。

◆外国人労働者を多く雇用する産業は、人手不足の緩和を主な目的とするグループと、日本人にない知識・技能を目的とするグループに分けられ、前者は後者の5倍以上の外国人を雇用している。企業が外国人雇用での課題として最も多く挙げているのは、日本語能力等によるコミュニケーションの問題だ。前者の産業で多い特定技能や技能実習の外国人労働者の過半は、初級以下の日本語能力しか持たない。こうした状況を放置すれば、日本人と外国人の賃金差が広がるだけでなく、日本社会における日本人と外国人の共生が難しくなる可能性がある。

◆外国人労働者向けの日本語教育機関は全国で2校しかなく、日本語教師の3割以上を非常勤、5割以上をボランティアが占めるなど、十分な日本語教育を提供するには教育機関も人材も不足している。政府は地域の偏在に配慮しつつ、外国人労働者に対する日本語教育の環境整備と人材育成に取り組む必要がある。その際、外国人労働者の日本語能力向上の受益者である企業に相応の負担を求めることも検討すべきだ。

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