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介護保険における被保険者の対象年齢引き下げの妥当性

2004年12月20日

齋藤 哲史

介護保険の被保険者を現行の40歳以上から20歳以上にまで引き下げるかどうかが、今回の改正の注目点であった。被保険者の拡大案が浮上したのは、要介護者や給付サービスの増加によって介護費用が当初の想定より上回ったからである。結局、被保険者の拡大は見送られることになったが、対象年齢の引き下げが妥当かどうか、ここでもう一度考えてみよう。

端的に言えば、被保険者の拡大案は見込み違いによって生じた財源不足を穴埋めするために生まれた窮余の策である。保険の財源不足は給付の削減か保険料の引き上げで解決されるべきであるが、政府は第三の道を試みた。未加入者(子や孫)からの調達である。しかし、赤字に陥る度に次世代に損失補填させるのは、単にツケを後世代に回しているだけである。これは明らかに保険の原則から逸脱しており、ルール違反といえよう。

現在の60~70歳世代は、平均して4~5人の兄弟姉妹がいたから、彼らの親たちは金融資産という形で将来に備える必要はなかった。ところが、彼らには平均して2人の子しかいないわけだから、費用全額を子の世代に頼るというのは道理に合わない。ただし、彼らは公的には準備してこなかったが、私的には十分すぎるほどの資産を保有している。実際、この世代は最も裕福な世代である。故にこの資産を保険料に充当すれば、相対的に貧しい子や孫の世代から所得を移転する必要はなく、財源の問題は解決しよう。

今回の改正では、被保険者の拡大は見送られたため、これまで通り40歳未満には保険料を支払う義務は発生しない。だが、彼らも将来に備える必要があることは言うまでもない。少子化の進行と要介護者が今後も増加し続ける事情を考慮すると、これからの世代は現在の高齢者世代以上の貯蓄が必要不可欠となろう。

それには終身保険である介護保険の財政方式を事実上の単年度会計(≒賦課方式)から、複数年度会計(≒積立方式)による運営に切り替えることが不可欠である。これによって、負担と給付の関係が明確となり、制度に対する信頼も生まれてこよう。介護保険は長生きをすればするほど世話になる可能性が高い保険であるため、将来自分たちが要介護の状態になった場合に備えて、今のうちに保険料を支払っておくことは必要かつ合理的なことである。実際のところ、「自分に戻ってくる=損をしない」という認識が共有できれば、若年世代が保険料負担に反発する理由も見当たらない。こう考えると、保険対象年齢の引き下げが正当化されるのはこの場合のみといえよう。

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