人事部は変われるか

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2004年11月26日

  • 川岡 和也
職業がら、企業の人事部門と仕事をすることが多い。人事部のメンバーが描く、これからの自社の方向性や社員の将来像、それを実現するための今後の人事諸制度のあり方や人事部そのものの役割に対する考え方は、当然かもしれないが企業によってまちまちで、我々コンサルタントにとっても始めてのお客様との仕事はいつも新鮮な驚きである。そんな中で感じるのは、人事部の役割が確実に変化してきているということだ。

企業は今、程度の差こそあれ、年功序列の給与体系を改め、業績への貢献を何らかの尺度で評価する人事制度を採用し始めている。従来も年齢や勤続の長さだけを評価するのではなく、資格や職位により賃金・その他の処遇が決まる仕組みは存在した。しかし実際のところ昇格や昇進が年功的な要因に左右されるケースがほとんどだったため、人事部も旧来からの年次を中心とした尺度での制度運用でなんとかなってきた。ところが企業は今、賃金等の従業員への給付の総原資が限られている中で、たてまえだけでなく実際に年次と切り離した昇格・昇給を実施せざるを得ない状況になってきた。その結果、従来のように年次に頼る昇格ではなく、成果や業績、取り組み姿勢や提案力等々、納得感ある尺度で評価する必要に迫られている。一方で65歳継続雇用の問題も絡んで、全社員を一律に年齢の要素だけで昇給を止めたり退職させたりするのは理屈が通らなくなってくる。ドラスティックな成果主義を導入しなくとも、従来よりも工夫した評価基準や評価方法が必要になっている。

従業員の側も仕事に対する意識は変化している。従来は定年を目処に会社に依存しているという姿だったのが、これからは、より自身のスキルを磨く傾向に変わってきている。自ずと企業の人事部も変わる必要が出てくる。従来は、人事部門は本業と直接関わる部署ではないとの理由から、必要最小限の陣容でまかなっていた企業も少なくない。これからの時代は従来のような単純な構図で管理職を目指す社員を作り上げればよいのではなく、従業員のスキルアップを後押しし、適材適所でそれを最大限に有効活用するとともに評価基準もそれに対応して変えていくことが肝要だ。その仕組み作りが社員の意識変革に追いつかなければ、スキルアップした有能な社員から人材流出していくことになる。経営戦略上も、人事部の役割は従来よりもずっと重要になっているのである。

社員を評価する側だった会社が社員からも評価される時代になってくる。それはすなわち、いい意味での会社と従業員間の互いの切磋琢磨の時代である。具体的な施策は会社ごとの工夫が必要で、その中で人事部の果たすべき役割は非常に大きい。人事部が率先して自己変革できるか。それが将来の会社の発展につながる重要なキーポイントとなっている。

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