学校債と格付け取得

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2004年11月10日

  • 内藤 武史
印紙税法基本通達では「社債券の範囲」は以下のようになっている。「社債券とは、商法の規定による社債券、特別の法律により法人の発行する債券及び相互会社の社債券に限られるのであって、学校法人又はその他の法人が資金調達の方法として発行するいわゆる学校債券等を含まない。」

また、所得税基本通達での「社債の範囲」は以下の通りである。「所得税法第2条第1項第9号に規定する社債とは、株式会社が商法その他の法律の規定により発行する債券及び会社以外の内国法人が特別の法律により発行する債券並びに外国法人が発行する債券でこれらに準ずるものをいうのであるから、債券の発行につき法律の規定をもたない会社以外の内国法人が発行するいわゆる学校債又は組合債のようなものは、これに該当しない。」

つまり、学校債は、商法の規定に基づき発行される社債には該当せず、したがって、証取法上の有価証券にも該当しないということになる。このことは、学校法人が金融機関や証券会社といった外部機関に依存せずに債券を発行することができるということを意味している。

だが、現実問題としては、不特定多数の投資家を対象として一定規模の学校債を継続的に募集することは、かなりの知名度を有する学校法人においてもそれほど容易ではなかろう。一方、投資家サイドからみても、学校債は原則として途中換金できない等、流動性に制約がある点が最大の難点と言えよう。こうした問題点を克服するためには、たとえば学校債を社債に転化する方法が有効と考えられる。具体的スキームとして一般的なのはSPC(特別目的会社)を利用した特定社債の発行が挙げられる。これは、SPCが学校法人から学校債を買い取った上でその資産が生み出すキャッシュフローを裏付けとした債券を発行し、元利金の支払いを行うしくみであり、ABS(資産担保証券)の一種である。

昨年2月6日、法政大学が国内の学校法人としてはじめてR&I(格付投資情報センター)よりAA-の格付けを取得した。これを皮切りとして、現在17の学校法人が格付けを取得している。法政大学はR&Iから取得した格付けを活用し、昨年来、市場金利連動型融資により有利な資金調達を行っている。さらに、前述の特定社債という形で資金調達が実現すれば、不特定多数の投資家を対象とすることが可能となるばかりでなく、発行条件の多様化にも寄与しよう。このように資金調達の多様化の流れの中で、学校法人にとって、格付けを取得するインセンティブは高まってくるとみられるのである。

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