情報システム部門は経営の舵を(もっと)取れ
2004年09月06日
大型コンピュータが途方もなく高価だった時代から、高性能のサーバ・マシンが廉価に手に入るようになった現代に至るまで、企業は情報システムに多額の投資を行ってきた。往時、情報システム部門は間接部門であり、システムコストは組織全体の間接費として計上された。その後、ビジネス部門の事業採算性が重視されるようになると、情報システムの利用状況に照らしてコストを配分し、各事業部門(ユーザ部門)に課金するようになった。情報システム部門は社内向けサービス供給者として自らコストを回収する運用形態を採り、プロフィット・センターへと変化したのである。使用実績に照らした課金方式は、ユーザ部門のコスト意識を高め、過剰な利用を制限するのに役立った。その反面、コストの顕在化は必要以上の抑制を招きかねず、先行投資の同意を得にくくする要因ともなった。また、システム部門とユーザ部門をサービス提供者と利用者の立場というドライな関係に導いた。
そして現在、情報システム部門はどこに向かっているか?システム基盤の構築スピードとコスト効率が経営課題になると、ユーザ部門が情報システムを活用する際に、アウトソーシングの採用を選択肢に含めるようになった。機動性と効率性が求められ、競争原理に晒される中、情報システム部門は経営戦略と歩調を合わせるために、サービス供給とコスト分配の新たな形を模索しようとしている。明日の情報システム部門に期待されることは、1)社内ユーザ向けにもサービス品質保証を織り込むことで柔軟かつ緊張感のある関係を構築する、2)経営上の優先順位を意識した情報システム資源の分配、3)将来の中核ビジネスにつながる新規プロジェクトの積極支援、4)部分最適ではなく企業全体の効率性追求、にある。一部門の独立採算性を追及するのではなく、組織一丸となって企業価値を高めるための工夫が求められている。
ユーザ部門にとって、情報システムはビジネス推進のための手段に過ぎない。情報システム部門は提供したサービスがもたらすビジネス価値に焦点を当てることで、単なるサービス提供者から経営戦略の一翼を担うパートナーへとレベルアップできるのである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年08月09日
企業に求められる人的資本と企業戦略の紐づけ、および情報開示
有価証券報告書における情報開示は実質義務化?
-
2022年08月08日
非農業部門雇用者数は前月差+52.8万人
2022年7月米雇用統計:雇用環境は堅調、労働需給はタイトなまま
-
2022年08月05日
2022年6月消費統計
感染状況の落ち着きから、緩やかな回復基調を維持
-
2022年08月05日
内外経済とマーケットの注目点(2022/8/5)
米国市場では8/10に発表される7月の消費者物価が注目される
-
2022年08月09日
投資家は非財務情報をどのように活用しているのか
よく読まれているコラム
-
2022年07月21日
2022年度の最低賃金引き上げはどうなるか
-
2015年03月02日
宝くじは「連番」と「バラ」どっちがお得?
考えれば考えるほど買いたくなる不思議
-
2022年01月12日
2022年米国中間選挙でバイデン民主党は勝利できるか?
-
2021年12月01日
もし仮に日本で金利が上がり始めたら、国債の利払い費はどうなる?
-
2006年12月14日
『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』で解決するものは?