定款授権の自己株取得のその後
2004年07月22日
多くの企業で採用される「定款授権の自己株取得の制度」 定款の授権があれば、いつでも、取締役会の決議で、実際の自己株式取得ができるという「定款授権の自己株取得の制度」(下表参照)が、昨年9月25日から活用可能となった。それに伴い、多くの会社で定款変更が行われ、制度が採用されたもようである。今年4月までの株主総会Ⅰで、325社の上場会社が定款変更したもようである。5月、6月の総会でも多くの企業が定款変更をしていると思われる。 授権後の取締役会決議 このように多くの企業が定款変更を行っているが、「定款授権の自己株取得の制度」が、それだけで「利用された」とはいえない。具体的な買い付けがなされるには定款変更後、少なくとも買い付け上限を定める取締役会決議が必要である。上場会社の場合、この決議がなされると取引所のルール等により適時開示がされることになっている。 この取締役会決議の適時開示がなされた場合、程なく自己株式取得が実際に行われるだろうか。もともと「定款授権の自己株取得の制度」が機動的な買い付けを可能とするためにできたのだから、行われると考えることは自然である。しかし、必ずしもそうとは限らないように思う。 確かに、「定時総会授権の自己株取得の制度」の下、定時総会で買い付け上限を定めるより、「定款授権の自己株取得の制度」の下、取締役会決議で定めるほうが機動的である。しかし、いつ自己株式取得を行うか未定だが、取りあえず、取締役会決議で買い付け上限を定め、代表取締役等に委任しておく可能性もある。 それ故、買い付け上限を定める取締役会決議に関する適時開示が行われても、必ずしも近い将来に自己株式取得が実際に行われるとは断定できないので注意が必要である。 Ⅰ)「資料版商事法務」(No.235~No.242)より。今年の5月、6月総会の会社の状況はまだ公表されていない。 |
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堀内 勇世