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介護保険は第二の年金?

2004年07月02日

齋藤 哲史

介護保険は制度開始から5年ごとに見直されることになっており、今年がその5年目に該当する。今回の見直しのポイントとして、給付抑制や自己負担率の引き上げ(1割→3割)等が俎上に上がっている。中でも注目されているのが、財源を拡大するために被保険者を現在の40歳以上から20歳まで引き下げるという案である。

40~64歳までの加入者は第2号被保険者とよばれるが、給付は加齢に基づく特定の疾患に限定されている。つまり、事故やがんなどの疾患が原因で要介護状態になっても、保険から給付されないということである。それに対して、65歳以上の第1号被保険者には、そういった制限はない。そのため、現行制度は拠出と給付が一致しないという批判が制度開始から付いてまわった。

被保険者を20歳まで拡大するうえで、こうした非難を回避しようと考えられたのが、障害者も対象に加えた制度にすることである。これによって負担と給付が一致することになり、若年世代から保険料を徴収する大義名分が立つと考えられたわけである。

そもそも、保険とは個々人では予測・対処困難なリスクを、一定規模の集団でプールして分散しようというものである。ところが、介護保険に関しては世代による発生リスクの違いをほとんど考慮していないうえに、リスクに見合った保険料を設定していない。つまり、ハイリスク集団の規模の拡大に起因する資金不足を、低リスクの集団に穴埋めさせようというものであり、これは明らかに保険の原則に反している。どうしても介護保険を存続させたいのであれば、65歳以上の高齢者だけのグループで保険をつくるのが合理的といえよう。

年金にも当てはまるが、我が国の社会保険制度の問題は、保険の名を借りた高齢者世代への所得移転になっていることである。高齢者世代が無一文で、彼らだけではリスクをプールできないというのであればこの制度は意味をもつ。だが実際には、高齢者は700兆円といわれる金融資産を持つ最も裕福な世代であり、相対的に貧しい若年者に扶養させるのはどう考えても不条理である。高齢者の保有する資産を有効に活用すれば、世代内での所得移転は十分可能であろう。

これ以上、高齢者を特別扱いし続けることは制度の信頼に関わってくるし、世代間の闘争を煽ることにもなりかねない。平等性・公平性を担保し、勤労世代が納得のいく制度を構築することが、政府当局には求められているのである。

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