大和の中国投資情報 6月号 今月号の視点 「軟着陸に向けて」
2004年06月21日
中国が日本のみならず世界に与える影響力はますます大きくなりつつあります。香港、北京、台北など中華圏にリサーチ拠点を有する大和総研では、重要性が増した中国経済・株式を分析する月刊「大和の中国投資情報」を創刊しました。
今月号の視点
ここ2、3ヶ月間、過熱する中国経済の着地点は、ハードかソフトかを巡って大きな関心を集めてきた。しかし直近の統計を見る限り、どうやら軟着陸を目指す中国政府の初期の目標は達成されつつあるようだ。
昨年半ばから始まった預金準備率引上げなど一連の金融引締め策により、銀行貸出の増加率は昨年8月をピークに鋭角的に低下していたが、この5月のマネーサプライ増加率は17.5%へ低下し、中央銀行の目標値である17%に近づいた。また、過熱する中国経済を象徴するものとして注目される固定資産投資の増加率も5月には大きく鈍化している。
これらをもって中国経済が軟着陸に成功というのは早計だが、比較的穏健な金融政策と、選択的かつ強力な行政手段の組み合わせによる信用抑制策は、早くも実効を上げ始めている。ただし、利上げそのものの必要性が消滅したわけではない。
周中央銀行総裁は、物価動向を注視するとしばしば発言しているが、5月の消費者物価上昇率は4.4%となって利上げの判断水準とされる5%に接近している。また、発電量、鉱工業生産などの伸び方などから推察される今年前半の経済成長率は、高成長を記録した昨年後半からさほど変わらないようであり、インフレ圧力がどの程度緩和されたかについて判断し難い。
経済の減速感と加速感が同居しているため、方向性が定まりにくいが、中国関連株の回復には、中国政府の経済管理能力に対する市場の信頼性がもう少し高まる必要があるといえるだろう。
今月号の視点
ここ2、3ヶ月間、過熱する中国経済の着地点は、ハードかソフトかを巡って大きな関心を集めてきた。しかし直近の統計を見る限り、どうやら軟着陸を目指す中国政府の初期の目標は達成されつつあるようだ。
昨年半ばから始まった預金準備率引上げなど一連の金融引締め策により、銀行貸出の増加率は昨年8月をピークに鋭角的に低下していたが、この5月のマネーサプライ増加率は17.5%へ低下し、中央銀行の目標値である17%に近づいた。また、過熱する中国経済を象徴するものとして注目される固定資産投資の増加率も5月には大きく鈍化している。
これらをもって中国経済が軟着陸に成功というのは早計だが、比較的穏健な金融政策と、選択的かつ強力な行政手段の組み合わせによる信用抑制策は、早くも実効を上げ始めている。ただし、利上げそのものの必要性が消滅したわけではない。
周中央銀行総裁は、物価動向を注視するとしばしば発言しているが、5月の消費者物価上昇率は4.4%となって利上げの判断水準とされる5%に接近している。また、発電量、鉱工業生産などの伸び方などから推察される今年前半の経済成長率は、高成長を記録した昨年後半からさほど変わらないようであり、インフレ圧力がどの程度緩和されたかについて判断し難い。
経済の減速感と加速感が同居しているため、方向性が定まりにくいが、中国関連株の回復には、中国政府の経済管理能力に対する市場の信頼性がもう少し高まる必要があるといえるだろう。
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