中国の民営企業の虚実

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2004年06月08日

  • 肖 敏捷
民営企業の健闘は市場経済国では当然だが、社会主義市場経済体制に移行して10年以上、WTO加盟から2年以上経過したにもかかわらず、未だ市場経済国とはいえない中国では画期的な事態である。統計システムの不備もあり定量的な説明は難しいが、各分野で頭角を表す民営企業が急増しており、自由化とグローバル化に向けて邁進する中国経済の新たな担い手として期待と評価が急速に高まっている。その将来性を否定するつもりは毛頭ないが、国有企業の実力を過小評価しがちな風潮と同じく、現時点では民営企業の過剰評価も危険といわざるを得ない。その理由は以下の三点である。

第一に、中国経済の主役は依然国有企業である。改革・開放政策の成果として、国有経済のウェートが大きく低下してきたことがよく取り上げられている。確かに、企業総数、工業総生産額などに占める比率でみれば、国有企業が計画経済時代の絶対的な優位からマイナーな存在に転落した。しかし、2003年に中国の鉱工業企業売上額上位1,000社のうち、国有企業及び国有持株会社は603社と半数を超えており、金融、保険、通信など非製造業部門でも国有企業の独壇場が続いている。

第二に、民営企業の育成に必要な環境整備は大幅に遅れている。民営企業が法律で正式に認められたのは1987年だが、私有財産権の保護など民営企業が強く求めてきた憲法修正は2004年まで持ち越された。資金調達、税制、市場参入など制度面で、国有企業は言うまでもなく、外資系企業と比べても不利な立場にあり、例えば、国有企業の参入業種の75%は対外開放済みだが、民間企業が参入できるのは50%以下との指摘がある。

第三に、国有企業に対する「創造的な破壊」は依然実現していない。政治や経済体制の激動をチャンスと捉え、事業に成功した民営企業家は少なくないが、国有企業を越える革新的な製品やサービスを生み出した経営者はほとんどいない。それどころか、利益追求の手段を選ばず、企業家としての資質が欠如した民営企業も目立つ。したがって、中国の市場経済の担い手として、民営企業の成長に賭けるより、むしろ大型国有企業の民営化に期待したほうが現実的ではないか。

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