中国貿易を巡る動き

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2004年03月08日

  • 佐藤 清一郎

2003年の中国の貿易黒字は、2003年255億ドルと、2002年の304億ドルから、やや減少している。しかし国別で見ると、むしろ収支不均衡は拡大している。すなわち、欧米向けの黒字が拡大している一方で、日本、韓国、台湾などアジア地域に対しては赤字が拡大しているのである。特に、米国向け黒字拡大のスピードが目立っており、人民元のレート見直し論議を再発させる一要因となっている。

中国の貿易収支に関して、国別不均衡が拡大している大きな要因は、機械・電子機器部門の動きにある。この部門における貿易収支の動きを見ると、欧米向けには黒字拡大、日本、韓国、台湾向けには赤字拡大という傾向が鮮明にでている。他の部門と比較しても、国別収支のバラツキ度合いは突出している。これは、大まかに言って、日本、韓国、台湾などアジア地域の国が、低価格中品質の製品を中国で製造して、それを、欧米市場に売っていくという、一つのビジネスパターンが出来上がっていることを物語っている。

こうした背景には、世界的な価格競争の激化に直面して、日本、韓国、台湾などの電子機器関連企業は、相対的にコストの安い中国への生産シフトを加速させていることがある。中国への直接投資が増加し、それにより、貿易額も拡大してきている。この動きは、特に、韓国と台湾で顕著にでている。両国とも、中国との貿易黒字拡大のほとんどは、電子機器部門で発生している。輸出の動きから見て、現在も、そのスピードは衰えていない。

この仕組みのリスクは、欧米向けの輸出が、急激に減速した時に、どうするかということになる。その場合、中国との貿易取引構造から考えて、日本、韓国、台湾にも、当然影響がでてくる。貿易関係が複雑化しているので、影響を一概に言及するの難しいが、中国シフトを急激に加速させて、国内的には、やや空洞化が叫ばれている韓国と台湾への影響度合いは、相対的に大きいと予想される。

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