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構造改革の再構築

2003年12月29日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 政策調査部長 鈴木 準

例年のことだが、税制改正や予算編成の季節が終わった。今年は、それに公的年金改革やいわゆる三位一体の改革が重なり、話が複雑になった。しかも、11月に総選挙があったため十分な時間はとれず、その後は自衛隊のイラク派遣に社会の注目は集まりがちであった。改革論議は年明けの国会に移るが、引き続き紆余曲折が予想される。その他にも、特殊法人改革、規制改革、包括的な税制改革、医療保険改革など、短中期的に必要な公的部門関連の改革メニューは目白押しである。それらを十分取り扱うことができたとは、とてもいえない2003年であった。これだけ多くの改革を、実効性を伴って成し遂げるのは途方もないことのようにも感じる。

しかし、政策決定プロセスや行政手法には評価すべき進化もみられる。審議会等の整理合理化やパブリックコメント制導入、独立行政法人化などによるアウトソーシングは現実のものとなり、各省庁は情報公開や政策評価に取り組んでいる。縦割行政を打破し総合的な調整を行う要である経済財政諮問会議は、首相がリーダーシップを発揮する機能や、「骨太の方針」「改革と展望」「改革工程表」を明示する役割を果たしている。もちろん、これらについて現在の運営・運用に問題がないわけではないし、その効果についての検証も必要だろう。しかし、10年前であれば考えられなかったことである。

また、まだまだ不十分とはいえ、改革の一部には一定の成果もでてきている。財政構造改革法の頓挫から得られる教訓は、それぞれの改革の組み合わせや順番の重要性である。年金・医療の社会保障改革を先行させて国庫負担の大きさを決めなければ、税の会計である一般会計の姿や必要な増税額は決まらない。一般政府ベースの財政赤字を縮小するには、単に地方向けの補助金や交付金を削るのではなく、国と地方の間の膨大な財政トランスファーを効率化することが必要である。また、80年代の財政再建では各種の補助金削減や民営化が小さくない貢献を果たしたが、特殊法人改革をはじめとする行政改革は、政治・行政面のみならず経済的にも意味が大きい。こうした観点から、現在進められている改革の手順は、歴史に学んだ結果にみえる。

問題は、種々の改革を有機的に結びつけるような形で、2010年代初頭のプライマリーバランス黒字化への道筋が描かれていない点である。企業や家計、市場が公的部門の構造改革の実現性に信頼がもてるようなプロセスとアプローチが十分に明確でないと、例えば同じ増税でもなし崩し的と受け取られ、経済的な痛みを深めて景気低迷を長期化させる心配がある。改革一般にいえることとして、景気への配慮不足と構造改革の遅れという二律背反的な批判に対する回答も必要である。2000年度は3%成長であったし、2002年度1.2%成長の後、2003年度は2%程度の成長を達成しようが、どう財政改革のスピードをコントロールするかのルールが必要だろう。以上のような視点から、改革の戦略をもう一段レベルアップできれば、多くの困難な改革を進めることは可能であろう。そうした状況をつくりあげる2004年となることを期待したい。

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鈴木 準

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