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デフレの理由は島国根性?

2003年12月19日

高橋 正明

景気が拡大基調にあるためか、デフレ対策を求める声は小さくなっている1。しかし、政府はデフレが経済成長の足を引っ張っていることを承知しており、今年の『経済財政白書』でも、「実効性のある金融政策を展開」することによるデフレ克服の必要性が強調されている。

問題は、「実効性のある金融政策」とは何かである。これを理解するために、財・サービス(モノ)、自国通貨(円)、外国通貨(ドルで代表する)の三つの関係を想定する。

モノの経済価値を通貨で表示したものが物価であり、ある通貨の価値を他通貨で表示したものが為替レートである。今、あるモノの経済価値が円では110円、ドルでは1ドルとすると、為替レートは当然1ドル=110円になる。

デフレ克服とは、モノの円建て価格を上昇させること、すなわち円の通貨価値をモノに対して低下させることである。たとえば、現在は110円で買えるモノが将来は150円になると多くの人に確信させることができれば、デフレは克服されることになる。

ところで、モノに対する円の通貨価値が下がっても、ドルの通貨価値とは無関係だから、モノのドル建て価格は1ドルのままである。したがって、為替レートは1ドル=110円から150円に向かうはずである。円のモノに対する通貨価値が低下すれば、外国通貨に対する通貨価値も低下して当然である。つまり、デフレ克服に実効性のある金融政策とは、為替レートを円安にする(円安になると多くの人に確信させる)政策に他ならない。日銀が円安にコミット2した上で通貨(マネタリーベース)を限度なしに供給していけば、必ず円安を実現できるから、デフレも必ず克服できる。「デフレ克服=金融緩和=円安」「円安なくしてデフレ克服なし」ということは、海外の専門家の間では常識3である。

外国経済の成長が日本にプラスになるのと同様、外国にとっては、日本がデフレを克服して成長率を高めることがプラスになる。そのため、「日本の金融緩和(=円安)に反対する国際的合意」など存在するはずがない(円安に反対することはデフレに賛成することを意味する)。そもそも、ある国が不況期に金融緩和することに、他国が反対するはずがないことは、常識で考えればわかることである。金融政策に関する国際的合意とは「各国は自国の経済状況に応じて自由に金融政策を行なうべき4」であり、だからこそ外国は日本に対して「一段と積極的な金融緩和によるデフレ克服」を求めているのである。ところが、日本人は「円安は外国に容認されない」という誤った思い込みに固執し、外国の要望を黙殺し続けている。

デフレが長期化している国は日本だけだが、その原因が世界の声に耳を傾けようとしない「島国根性」にあると言うのは言い過ぎだろうか。


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1.経済産業研究所のポリシーディスカッション『声なき声になったデフレ退治論』が参考になる(http://www.rieti.go.jp/jp/special/policy_discussion/10.html)。
2.これまでの量的緩和策の効果が乏しい理由に、円安へのコミットメントの欠如が指摘できる。
3.ノーベル賞学者スティグリッツの「円安必要論」は、財務省における討議に詳しい(http://www.mof.go.jp/singikai/kanzegaita/giziroku/gaic150416.htm)。
4.金融政策を変更する際に、他国に伺いを立てる必要はないということである。中央銀行の独立性は、自国政府に対してだけではない。

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