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投信は持続的成長に貢献しうるか

2003年12月09日

松原 英人

四半期ベースの日銀資金循環勘定によると家計による投信保有は本年第1四半期(1~3月)末に約3年ぶりに底を打った。第2四半期にかけての3ヶ月間では、株高の追い風もあり、1.5兆円と久しぶりに大幅な増加を記録している。

この増加額は個人金融資産の約0.1%に相当する。株高に勢いを得た個人投資家がリスク許容度を高めたものとも解釈できようが、実は単に投信の残高にとどまらず、今後の構造改革の先行きにも重大な影響を及ぼす可能性がある点で注目される。

仮に現状に至る株高がここ数年様々に形を変えながら続いているモラルハザード的な現象の一つにすぎず、規律を欠いた経済成長が裏付けとなっているのであれば、投信市場の成長にも自ずと限度があろう。一例は99年から2000年にかけての短命な投信ブームで、米国のITバブルに煽られた面もあったが、最終的にはハイリスクの中小型株ファンドなどに資金集中が生じ、結局は短期的・泡沫的なブームに終わった。

反面、例えば公的資金投入についても、とりあえず金融危機への抜本的な対処といった形で肯定的に解釈するのであれば、その後の株高や投信残高の伸びもより長期的・建設的な意義を帯びたものとなってくる。事実、足利銀行の処理に際しても、株式市場は悲観しておらず、こうした解釈が成り立つ余地はあるものと思われる。

ここで、1970年代後半の米国を例として引き合いに出すと、疲弊した経済の建て直しのために導入されたderegulation(規制撤廃)を柱とする一連の経済改革がかなりの摩擦を伴いながらも一応の成果に結びついたのは1980年代初めである。すなわち、インフレ期待に基づく過剰投資の抑制、レイバーコストの抑制、生産性向上を背景に、市場金利の劇的な低下と株価急騰という象徴的な成果を達成したのである。FRBのFlow of Funds Accountsからはこの間に生じた現象として、ミューチュアル・ファンド(MF)の役割に重要な変化が生じていたことが観察できる。つまり、それまで資金流出が続いたMFの残高が一応下げ止まったのが81年で翌82年と2年連続して純増を維持した。この2年がいわばMF成長のリードタイムとなっている。両年の純増額は個人金融資産の0.09%に相当するもので、変化の水準自体はまだ僅かなものであったが、見逃せないのはMFにプールされた資金の大半が82年以降は米国株式に投資されるという循環が形成されたことである。この小さな循環が機能し始めたことで、MFの増加は83年には個人金融資産の0.3%へと一気にスケールアップしていく。これがその後基本的には2000年まで続く好循環の原点である。

さて、再び冒頭掲げた比率に戻ると、直近1四半期だけで日本での投信残高は個人金融資産の約0.1%に相当する額だけ増加したが、これは20年前、米国でのリードタイム期に見られた水準に匹敵するものである。上述の通り、これが国内株式投資に向かう循環が形成されれば、今後の日本経済の先行きにも好影響を及ぼし、改革の進展に貢献するものと考えられる。また、単に個人投資家としての家計が純投資として投信を買い付けるだけでなく、確定拠出年金を通じて投信を定期的に購入する仕組みまで既に制度化されている。これも長期的・建設的な目的を有した重要なリスク資金供給源である。

では、実際に投信は何を買っているのか。あるいは、より正確に言えば、投資家は何に投資する投信を買っているのだろうか。現状では、増加分はほぼ6:4で国内株式と海外投資に向かっている。先日の総選挙の結果と同様、改革を大枠では支持しているものの、反対意見にも巧みにヘッジを効かしているかのような状況である。明らかに、国内経済への信頼次第で、投資家は上記バランスを容易に変えるであろうし、さらにその成り行き次第では日本経済の活性化に貢献しうる循環の形成には至らないであろう。かえって他国の成長をファイナンスし空洞化に拍車をかけるだけに終わることも十分予測できる。

あだ花ではなく、今度こそ好循環を構築し、投信を持続的成長に貢献させなければならない。投資対象である企業・政府、市場、投資家との相乗的・建設的な関係が成り立ってこそ、改革の成功も持続的成長モデルの形成も可能となる。

その試金石は、今後国内経済への信任回復を象徴するほどの資金移動が生じるか否か、リードタイムから本格的な好循環につながる動きが生じるか否かであろう。米国での例に倣えば、具体的には個人金融資産の0.3%、金額にして4、5兆円規模の家計による投信残高増加が数年内に投信市場で生じるか否かといったところである。

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