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EU加盟目前のポーランド

2003年12月01日

経済調査部 経済調査部長 山崎 加津子

来年5月、欧州連合(EU)は現在の15カ国から25カ国にメンバーが拡大する。新加盟国の中で最大の人口を有するポーランドを先月初めて訪問する機会を得た。印象的だったのは、日本の投資に対する強い期待感である。現状は、日本からポーランドに対する投資は、ハンガリー、チェコに対する投資よりも少ない。ポーランド財務省はこれを大いに残念がり、90年代を日本との関係については「失われた10年」と表現していた。

市場経済への移行開始から10年以上が経過したポーランドには、欧米からは既に大量の投資資金が流入している。同国の国有企業の民営化はケース・バイ・ケースの対応で成功したと評価されているが、銀行部門は8割近くが外国資本の所有である。ポーランドは人口構成が若く、安価で豊富な労働力の供給が可能である。また、農業の比重が相対的に高いため、EUから多額の補助金を得られる見通しである。このような点からEU加盟による恩恵は、中長期的には新加盟国の中でも特に大きいと予想されている。経済移行プロセスは、早い段階で強力な金融引締め政策を採用した結果、インフレ抑制に成功し、現在はEU加盟国よりも低水準のインフレ率となっている。また、銀行監督制度等のルール作りも進んでいる。

ただし、問題がないわけではなく、最大の課題は拡大を続ける財政赤字である。その原因は、社会主義時代の社会保障制度の改革が進んでいないことに加えて、ここ数年、民営化プロセスが遅滞していることである。特に重工業部門の民営化が遅れており、歳入の減少、及び、民間部門に比べて賃金上昇率の高い公的部門の雇用温存を通じて、財政赤字を拡大させている。財政赤字拡大は長期金利上昇を招いており、経済活力をそぐ要因となる。また、EU加盟の次のステップとして単一通貨ユーロを導入する際は、財政赤字と長期金利の基準達成が求められる。

このように課題はまだ多いが、EU加盟で一段の発展の期待できる潜在力をポーランドは持っていると考えられる。加えて、同国は親日的な感情の強い国とされる。その理由としては、かつて宿敵のロシアを相手に日本が日露戦争を戦ったためとも、シベリアに残されたポーランド人孤児の送還に貢献したためとも言われる。投資対象として魅力の高い国といえるのではないだろうか。

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山崎 加津子

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