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揺らぐ運用基本方針

2003年11月27日

大藤 康博

先月半ばに、企業や公的年金のスポンサーに向けられた運用機関の主催する米国で行われたセミナーに参加した。毎年同時期に開催されており、米国での年金運用の潮流について、同運用機関の講師陣により1週間に亘り講義が行われる。今年度の話題の中心は、米国の企業年金はここ数年の運用環境の悪化により、株式主体の運用基本方針(基本資産配分とも呼ばれる)を見直し始めているといったことであった。また主催者側の運用機関もリスク資産に傾斜した基本方針を個々の成熟度等負債状況に応じて再考すべき旨を主張していた。

我が国の企業年金基金(以下「基金」)も同様に、3年連続のマイナス利回りの影響によって、米国以上に年金の運用状況は大幅な積み立て不足を惹起し、深刻な問題となっている。このため各基金は掛金負担の増大を回避すべく、代行返上、給付引き下げ等制度面での対応を余儀無くされている。また運用面では米国と同じように、運用の予定利回り引き下げとも相俟って株式資産の引き下げ、債券のウェイトアップといった運用基本方針自体の見直しが図られている。

参加したセミナーでは運用悪化によって年金債務が企業のバランスシートに悪影響を及ぼしており、多くの基金でこれまでの株式主体のハイリスクな運用から債券を中心としたリスクを抑制した運用に切り替えることを検討している旨が説明されていた。しかしながらその米国の基金は、これまでの反省からリスクを低減する方向性については理解を示す一方で、現実的にはその変更には踏み切れていないとのことであった。この背景としては、債券にシフトした基金が自らの目標を継続的に凌駕したといった成功事例が余り無いといったことが挙げられている。つまり他に先んじて行動するといった、異端者リスクを踏むことを懸念しているのであろう。

我が国基金は、米国とは異なり債券中心の基本方針に変更した事例は少なくないものの、今年度に入り株価の上昇により、多くの基金がリスク抑制型の方針変更に躊躇しているようである。数ヶ月前までは株式投資自体の是非を問いかけていた基金も、足元では先行きの株価上昇期待から方針の見直し自体を取りやめた先まである。このようにマーケット動向にその方針が揺れる基金ではあるが、先行きの市場見通しが如何に不確定であるかは、99年以降のIT相場による大幅な変動を通じ、身をもって体験しているはずだ。

年金運用結果に対する評価は、短期的な側面が強くなりつつあることは認めざるを得ない。しかしながら、こうした難しい状況下であるが故に基金が個々の年金の財政状況、母体の財務状況を勘案し十二分に内部で議論を行い、その結果相応の説明力を有し、短期的な市場動向に流されない中長期的に堅持できる運用方針を策定することが求められている。

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