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年金がもらえないって言ってるの誰?

2003年11月14日

政策調査部 主任研究員 鈴木 裕

ほとんどの人は知らないだろうが、11月上旬は年金週間(6日~12日)である。そのせいか、国民年金のテレビCMが頻繁に放送されていた。スタジオのように見える場所で、江角マキコが「将来年金がもらえなくなるかもって、言ってたの誰?」と、持ち前のでかい態度で若い男女数十名を相手に詰問する内容だ。CMは、「今納めていれば必ず受け取れる、それが国民年金」と結ぶ。もちろん、いったい何歳から幾ら受け取れるかは明らかにされていない。

このCMを見てやや居心地の悪さを感じる所がある。確かに、国民年金の収納率は急落し、62.8%(前年から8.1ポイントの低下)になり、特に若年者で下落が著しいので、若年者を啓蒙する必要があるのかもしれない。しかし、この年齢層では経済的に納付が困難な者が少なくない。納付免除制度が厳格化したことによって新たに納付を求められる層は、若年に多いだろうし、もともと若年者の失業率は決して低くない。国民年金の保険料は月に1万3300円で負担感は重い。大学生も20歳以上なら保険料納付が原則必要であるが、多くの場合、親が授業料・生活費も負担しているので、さらに年金保険料もとは言い難いだろう。つまり、若年層の不納付は、納付したくてもできないという要因がかなりあるのではないかということである。公的年金制度の不信感も大きな原因だが、保険料納付によって現実的な生活が脅かされる恐れがあることを忘れてはなるまい。

したがって収納率アップのためには、今保険料を納付しておくことが有利な取引であるという認識を広めることが必要だろう。有利な取引かどうかは、年金制度内だけの負担と給付にとどまらず、税制その他の社会システムを含めて検討されるべきである。

もともと、国民年金は、若年障害への備え、給付保障の確実性や国庫負担が存在すること等を考えると、民間の年金保険に比べ、現状では決して不利な選択肢ではないと思える。とはいえ、国庫負担のあり方も再検討されるようなので将来給付については、やや辛めに見ても、納付保険料が全額社会保険料控除の対象になるという点は今現在の高所得者に魅力的に映るはずだ。さらに減免制度弾力化や別途新たに補助金制度などを活用することによって、低所得者にとっても国民年金への加入・納付がどう見ても「お得」に見えるようになれば、収納率が上向くことも考えられるのではないか。将来の給付が不透明だとしても、それを払拭するだけの現存利益が明白であるかのように見せる正当な工夫をするべきだろう。それを恫喝のように収めろといっても反発を買うだけである。

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政策調査部
主任研究員 鈴木 裕