サマリー
◆今後見込まれる、企業や家計の電力料金の上昇は、原発停止による火力発電の増加や再生可能エネルギー導入の影響に加えて、高齢社会の加速という需要面の影響も無視できない。
◆高齢世帯では実質的な電気代(電力需要量)がそもそも上昇しやすい。その理由は、高齢者になると在宅時間が長くなることや、安全で快適な暮らしを実現できる電化製品への依存を高めていることが挙げられる。コーホート別に見ても新しい世代になればなるほど電気代は高くなっている。今後は高齢世帯数も増加していくため、人口動態的な要因からもますます家計部門の電気代は増えていく可能性が高い。
◆マクロ的な電力需給のバランスをとる観点から、個々人の生活の質を落とさずに電気代の上昇を抑えるには、電力需要をうまく抑制する必要がある。だが、現在は家計部門について、需給逼迫時に首尾よく電力需要を抑制するシステムが備わっていない。
◆電力供給不足とコスト増を回避するには効率的な電力需給システムの構築が必要であり、そのためには、電力使用量の「見える化」を促すスマートメーターや、インターネットと接続して電力使用量を抑えるスマート家電やスマートグリッド、そして価格メカニズムの導入といったハードとソフトの両面のインフラが不可欠となってくる。
◆ITを活用した電力需給システムでは、取り扱う情報量が膨大なものとなるだろう。そうした情報は情報セキュリティに対する万全の対策も必要である。ビッグデータを安全かつ効率的、そして低廉に行うシステム作りが、日本経済にとって新たな課題といえるだろう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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