再生可能エネルギー法と電力料金への影響

電力料金の上昇は再生可能エネルギーの導入量と買取価格次第

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2011年09月02日

サマリー

◆8月26日に成立した再生可能エネルギー特別措置法では、再生可能エネルギーの固定価格での全量買取制度(住宅用は余剰買取制度)が採用され、買取費用はサーチャージとして電力料金へ上乗せされる。専門家による第三者委員会の意見を参考に、毎年度発電源ごとに買取価格が決められる。特に法律の施行後3年間は、再生可能エネルギーによる発電量の拡大を図った価格付けが行われる。

◆今後の注目ポイントは、買取価格の決め方と電力料金の上昇幅である。諸外国の経験を踏まえると、再生可能エネルギーの導入を促進させるような数年先まで見通せる買取価格の発表の行い方や、再生可能エネルギー投資が過熱した場合に早い段階で買取価格を引き下げるルール、そしてエネルギー政策や国民の負担にも配慮した決め方が必要である。

◆制度開始後10年目で再生可能エネルギーの発電量シェアが20%、買取価格が半値まで低下するケースでは、標準的な家庭の電力料金は431円/月、大規模工場では345万円/月増加すると試算された。電力料金の上昇幅は仮定の置き方によって試算結果が異なる。これまで言及されることが多かった「月額150円程度の負担増」という従来の政府試算を前提にするのではなく、目標とすべき再生可能エネルギーの導入量や今後決まっていく買取価格の議論の中で、電力料金を見通す必要がある。

◆一般的に日本の電力料金は高いと言われるが、主要国の産業向け電力料金を購買力平価ベースで比較すると、日本はヨーロッパ諸国並みだが韓国より4割ほど高い。だが、製造業の電力負担率は、電力効率的な生産技術を保有しているため平均的な水準より低い。電力料金上昇の負担と産業の空洞化という面だけでみれば、省エネ投資を増やし、電力効率的な生産体制をいっそう整備することで国際競争力を維持・強化できるのではないだろうか。

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