サマリー
◆米国では、2026財政年度が開始する10月1日までに、裁量的支出に関する本予算や、一時的な支出を手当てするつなぎ予算が成立しなかったことで資金不足が生じ、防衛等の必要不可欠な機能を除いて連邦政府は閉鎖することとなった。予算が未成立となっている主因として、2025年末に失効予定の医療保険(オバマケア)の補助金延長をめぐり共和党と民主党の意見の隔たりが大きいことがある。政府閉鎖が長期戦の様相を呈する中で、注目されるのは景気への影響だ。政府閉鎖が長引いた過去のケースに注目すると、景気への悪影響は政府支出で顕在化するものの一時的なものであり、民間最終需要といったその他の内需項目への影響は限定的と考えられる。
◆他方で、今般の政府閉鎖では、過去のケースに比べて景気への悪影響が拡大する恐れがある。トランプ第二次政権は政府閉鎖を契機にインフラプロジェクトの資金凍結を恒久化し、一時帰休となっている連邦政府職員の遡及的な給与の支払いを保証せず、リストラも実施するといった政府効率化を進めている。つまり、今般の政府閉鎖は、単に連邦政府の機能が一時的に停止するという事態を指すだけではなく、政府支出の抑制政策の延長線上にあるといえよう。こうした政府閉鎖を契機とした政府支出の抑制政策は、たとえつなぎ予算で一時的に政府閉鎖が解消しても、2026財政年度予算が成立するまでは繰り返される可能性がある。そして、その度に政府支出や個人消費・設備投資、ひいては米国経済全体に下押し圧力がかかり得るといえよう。
◆なお、政府閉鎖によって、ほとんどの経済指標の公表が停止されており、景気の良し悪しが判断しにくくなっている。民間データ等を基に、大和総研が作成した米国週次景気指数によれば、9月末までは堅調さを維持していたことが示唆される。しかし、景気指数の構成データの一つであるクレジットカードデータ等による消費動向は10月第1週に落ち込んでおり、政府閉鎖の影響が個人消費の弱含みという形で出始めた可能性がある。景気の下振れリスクが高まる中で、10月末の次回FOMCでは0.25%ptの利下げが見込まれる。他方で、12月のFOMC以降の金融政策運営に関しては不透明な状況が続きやすい。当面は利下げに対する過度な楽観も悲観も禁物だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
ウォーシュ公聴会から読み解く利下げの行方
当面は様子見、生産性上昇とバランスシート縮小で利下げ余地を拡大
2026年04月24日
-
米銀資本規制の見直し案、大幅な規制緩和へ
住宅ローン・中小企業向け融資の促進、FRTBは「資本フロア」なし
2026年04月24日
-
米国経済見通し 消費維持に必要な雇用者数は?
現状の雇用者数の伸びでは消費に緩やかな下押し圧力が生じやすい
2026年04月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

