GPIFのESG指数投資削減に求められる説明責任

投資先企業の信任を失えば「市場の持続可能性向上」は実現不可能

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  • 調査本部 フェロー兼エグゼクティブ・サステナビリティ・アドバイザー 塩村 賢史

サマリー

◆GPIFは2024年度業務概況書等で、ESG指数投資額の最適化に向けた取組を進めており、2025年3月末時点で国内株式の15.9%を占めるESG指数投資の割合を同年5月末までに約13%まで低下させたことを明らかにしている。これは、僅か2ヵ月間で、ESG株式指数に連動する運用を約9.8兆円から約8.4兆円 に1.8兆円程度削減した可能性があることを意味する。

◆なぜ、短期間でESG指数投資を大幅に削減したのかについては、業務概況書のコラム「ESG指数投資額の最適化に向けた取組」で解説をしているが、そこからはその真意を読み解くことは難しい。

◆ESG指数投資は、企業のESG対応強化のインセンティブとなり、企業の行動変容を促すことで市場の持続可能性を高めるというベータ・アクティビズムの観点でも、市場平均収益率の確保という観点でも、ESG指数投資を始めた当初からの期待を大きく損なっているようには見えない。

◆GPIFの運用資金は、被保険者に対する高い説明責任を負っていることは言うまでもないことであるが、殊、ESG指数投資においては、企業にESGに関する取組の強化を促し、市場全体の持続可能性を高めるということも目的にしている。

◆GPIFによるESG投資への強いコミットメントが、日本企業のESG投資のスタンスを変えてきたことを考えれば、GPIFのスタンスの変化は、日本のサステナブルファイナンスの行方に大きな影響を及ぼす可能性がある。現在行われているESG指数・ESGファンドの選定とその後のGPIFのメッセージには注目したい。

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