サマリー
◆計画停電や電力の使用制限といった量の割当は、経済的・社会的損失の大きい資源配分手段であるという問題意識に立ち、価格メカニズムを通じた需給調整機能の有効性について考察した。その際、電力需要のコントロールが難しい点で電力不足解消のカギの一つである、家計部門に主に着目して検討した。
◆従来、電力需要の価格弾力性は直感的に低いといわれてきたが、需要側に着目した分析は十分に蓄積されていない。本稿における電力需要関数の推定では、家計部門の弾性値は短期で▲0.47、長期で▲1.48という値が得られた。すなわち、価格を機能させた効率的な電力需給システムの再構築は可能であり、望ましいというのが私たちの結論である。現状は、どの経済主体がどの時間帯にどれだけの電力需要を真に必要としているのか不明確な需給システムであり、そうした内部情報を引き出すことが価格機能に期待される役割である。
◆もちろん価格メカニズムは万能ではない。今後スマートグリッドが整備され、スマートメーターなどの双方向の通信機能を持つ制御機器が導入されていけば、それらが価格を通じた需給調整機能を補完することになるだろう。従来はあまり議論がみられなかったこうした視点も本稿は提示している。
◆米国における価格型デマンドレスポンス(価格メカニズムを使って電力需要を制御すること)の事例・実験結果によれば、スマート機器を用いた場合に、より効率的な需要抑制が観察されている。日本でも北九州市等で注目すべき実証実験が進められており、再生可能エネルギーを大量導入した環境下における、価格メカニズムとスマート機器による需給制御の可能性について、有用なデータや研究の蓄積が進むことが期待される。
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