サマリー
◆米国の個人消費は、株高に支えられて好調な高所得層と、実質所得が伸び悩む低所得層で二極化している。資産効果が消費をけん引する状況で注意すべきは株価の急激な落ち込みだが、世界金融危機の直前と比べると、家計向け、企業向けともに主要なローン市場で信用不安が広まるリスクは小さいと評価できる。一方、プライベートクレジット市場では債務残高比率が上昇している。インフレ率が高止まりすれば、引き締め的な金融政策の継続によって、プライベートクレジット市場での破産件数の増加やそれに伴う株安が発生する可能性があり、警戒が必要だ。
◆トランプ米政権による高関税政策(トランプ関税)は、潜在成長率を下押しし、米国経済に中長期的に悪影響を与える可能性がある。確かに関税率引き上げは保護産業へは一定程度のプラスの影響があるものの、保護産業に対する追加関税が価格に転嫁されれば、より下流に位置する産業の生産コストは増加する。これが同産業の競争力の低下を通じて生産水準を下押しするだけでなく、雇用や設備投資にも悪影響を及ぼすと考えられる。トランプ関税によって2027年の米国内生産は10%程度下押しされるとみられ、とりわけ自動車・同部品や一次金属、建設業などで悪影響が大きい。
◆株安やトランプ関税のほか、トランプ政権が重視している不法移民政策の強化によって、米国の実質GDPは2029年時点で合計3.2%押し下げられるとみられる。たとえAI技術の普及により生産性が大幅に向上しても、マイナスの影響が全て相殺されるわけではない。当社のマクロモデルで試算すると、米国経済の下振れにより、日本の実質GDPは2029年に最大で0.33%下押しされる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年4月消費統計
サービスは弱いものの財が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2026年06月05日
-
中東情勢悪化の影響、企業から家計に波及
価格転嫁で企業収益への影響は緩和も、消費の下押し圧力が拡大
2026年06月04日
-
消費データブック(2026/6/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2026年06月03日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
-
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
-
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

