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欧州財政危機からの教訓

静かな財政危機に覆われた日本は何を学ぶべきか

2011年12月02日

経済社会研究班

リサーチ本部 執行役員 リサーチ担当 兼 政策調査部長 鈴木 準

サマリー

◆イタリアやスペインの財政に衆目が集まるのは欧州全体の問題という性格も強いが、各国固有の状況を確認しておくことは無駄ではない。本レポートでは、両国の財政状況やマクロ経済の基礎的条件を確認し、日本にとっての示唆を得たい。

◆イタリアやスペインの基礎的財政収支は基調として黒字で、債務残高GDP比も安定的に推移している。市場からの信認を得るためには、PB黒字化や債務残高GDP比の安定化だけでは不十分というケースだ。高水準の債務は危機に直面しやすいこと、数十年前の財政運営が現在を規定し、現在の財政運営が数十年後まで影響を及ぼすことを踏まえたい。

◆経済の基礎的条件をみると、スペインと対比してイタリアは成長率の低迷が見込まれており、背景には低い労働生産性や低い労働力率などもみえる。財政の維持可能性が疑われている中での低成長は、金利・成長率格差を拡大させ、財政運営を一層困難にするという悪循環に陥りがちである。

◆経常赤字国の財政問題は、市場から厳しく評価されることが多い。ただ、スペインは民間部門が支出を抑制(貯蓄不足を解消)する中で財政悪化と経常赤字縮小がみられているのに対し、政府だけでなく民間企業部門も恒常的な資金不足にある点でイタリアは経済改革の必要性がより高いとみられる。日本の場合、経常黒字は景気低迷の反映という面があり、財政収支の改善には消費や投資の活性化が不可欠である。

◆日本は国債を国内で消化できていると強調されることが多い。イタリアやスペインと比べて確かにそうだが、市場が内外で分断されているわけではない以上、むしろ海外部門による日本国債への投資は拡大が望まれよう。また、日本でも市場取引における海外部門の存在感は決して小さくない。残高ベースでみた国債の外国人保有割合の低さは、日本について楽観できる要因ではない。

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