2015年03月11日
サマリー
◆独立取締役を指標としてポートフォリオを作成し、そのリターンの分析を行ったところ、2010年初から2014年末までの5年間では、独立取締役が1人、2人、及び3人以上のポートフォリオのリターンは、いずれも配当込みTOPIXと同程度となった。
◆東京証券取引所の上場規程で独立役員に関する情報開示の充実などの改正が行われ、新聞や雑誌で独立取締役に関連する記事が増加した2012年以降の3年間では、配当込みTOPIXの年率リターンが27.2%であったのに対し、独立取締役が3人以上の企業のリターンは30.3%で市場全体を上回った。一方、独立取締役が1人または2人の企業のリターンはそれぞれ25.8%と25.2%となり、いずれも市場全体を下回っている。また、独立取締役比率50%以上の企業のリターンは34.8%と非常に高い。
◆独立取締役とROEの関係を調べると、2014年末時点での実績ROEは独立取締役が存在する企業が7.9%であるのに対し、存在しない企業は6.9%であった。また、予想ROEについても9.8%と9.0%で独立取締役が存在する企業の方が高い。さらに、独立取締役が多いほど実績と予想のROEが高いという傾向がある。
◆独立取締役が多い方が外国人持株比率が高いという関係があり、2014年では独立取締役が1人の企業の外国人持株比率が14.8%であるのに対し、3人では26.3%、5人以上だと35.3%であった。
◆独立取締役の選任が増えていくことが予想されるが、独立取締役の人数という形式的な面だけではなく、独立取締役として適切な人材を積極的に選任し、実際に企業の成長や企業価値の向上に資するような環境を整備することも求められよう。
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