2015年07月17日
サマリー
◆2013年度の売上高当たりCO2排出量とROEの関係を調べると、ほとんどの企業で2013年度が該当する1期前実績ROEが上場企業全体では6.0%であったのに対し、売上高当たりCO2排出量が小さいグループは8.8%、大きいグループは5.9%となった。また、実績ROEや予想ROEも売上高当たりCO2排出量が小さいグループの方が高い。
◆売上高当たりCO2排出量が小さいグループと大きいグループのそれぞれでポートフォリオを構成し、2010年1月から2015年5月までのリターンを算出すると、配当込みTOPIXのリターンは年率で14.3%であったのに対し、小さいグループは15.6%、大きいグループは12.9%となった。
◆2009年度に対する2013年度の売上高当たりCO2排出量増減率とROEの関係を調べると、排出量が減少したグループの1期前実績ROEは8.2%、増加したグループは5.9%であった。また、20%以上減少したグループのROEは9.0%とさらに高い。また、実績ROEや予想ROEも同様の傾向が見られた。
◆売上高当たりCO2排出量が減少したグループと増加したグループのそれぞれでポートフォリオを構成したところ、排出量が減少したグループの年率リターンは14.4%で配当込みTOPIXとほぼ同様であったが、増加したグループのリターンは13.1%にとどまった。また、排出量が20%以上減少しているグループのリターンは16.2%と高い。
◆売上高当たりCO2排出量は環境効率性の指標の1つと考えられる。本稿の分析は因果関係を示すものではないが、環境効率性とROEやリターンとの間に何らかの関係が存在することを示唆する結果と考えられよう。
◆COP21に向けて、「日本の約束草案要綱(案)」で温室効果ガス排出量の削減目標が示され、企業もさまざまな対策・施策を実施することになろう。今後、環境効率性の向上を視野に入れながら温室効果ガスの排出削減を進めることで、経済成長と環境保護を両立させる「グリーン経済」の実現に寄与することが期待される。
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