2015年04月08日
サマリー
◆気候変動問題への企業の対応を評価したCDPのパフォーマンスバンドを指標としてポートフォリオを作成し、そのリターンや収益性、外国人持株比率の分析を行ったところ、次の結果を得た。パフォーマンスバンドはAを最上位とし、AからEまでのバンドが付与されている。
◆直近5年間の配当込みTOPIXの年率リターンが11.5%であったのに対し、パフォーマンスバンドがC以上の企業のリターンは11.9%で市場全体をわずかに上回った。一方、パフォーマンスバンドがD以下の企業のリターンは10.5%で市場全体を下回っている。
◆パフォーマンスバンドとROEの関係を調べると、パフォーマンスバンドがC以上の企業の2014年末における平均的な実績ROEは8.4%であるのに対し、D以下の企業の実績ROEは5.9%にとどまっている。因果関係を示すことは困難であるが、気候変動問題に対して適切な対応を行っている企業は収益性も高いという関係が存在しているようである。
◆パフォーマンスバンドと外国人持株比率の関係では、気候変動問題への対応の評価が高い企業の外国人持株比率が高いことがわかった。因果関係を示したわけではないが、グローバルな基準で投資を行っていると考えられる外国人投資家の投資判断に気候変動問題に対する企業の対応が考慮されている可能性が指摘できよう。
◆本稿のリターン分析の結果は、気候変動問題への対応というESG要因を考慮した投資が経済的に劣後しない可能性を示唆しよう。また、ESG要因を考慮したインデックス運用の可能性も示唆しているのではないか。
◆気候変動問題に対する日本企業の対応の評価は向上しているが、さらに気候変動問題への取り組み等を進展させるとともに、その情報を適切に開示し、環境に配慮した経営を行う企業に資金が流れる社会システムを構築することで、日本の持続可能性を高めることに寄与することが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
ESG情報の開示と投資への利用の現状と課題
投資家が望むのは、企業価値の創造プロセスの開示
2015年08月25日
-
CO2排出量の動向と企業パフォーマンス
ESGポートフォリオのリターン分析④
2015年07月17日
-
社会的責任投資(SRI)とCSR情報の評価
2014年12月25日
-
ESGポートフォリオのリターン分析①
女性活躍関連のポートフォリオ
2015年02月06日
-
ESGポートフォリオのリターン分析②
企業統治関連のポートフォリオ
2015年03月11日
同じカテゴリの最新レポート
-
生活費危機の時代に重要な「生活賃金」
多様なステークホルダーとの「賃金をめぐる対話」が企業の課題に
2025年09月18日
-
EUサステナ開示規制の域外適用見直しへ
米国とEUは関税合意の一部としてサステナ開示の域外適用を見直す
2025年09月12日
-
機械学習による有価証券報告書(2025年3月期)の人的資本開示の可視化
経営戦略と人事戦略の連動や、指標及び目標の設定に課題
2025年08月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日