ポケモンセンターで見つけた「推し活」の展望
2025年02月19日
先日、妻と東京スカイツリーにあるポケモンセンターを訪れた際にとあるグッズに目を奪われた。「ウルガモス」というポケモンをあしらったサンキャッチャーである。「ウルガモス」は太陽をモチーフとしており、サンキャッチャーはぴったりのコラボ相手である。まさに商品とキャラクターの結びつきが感じられる逸品だ。少なくとも、「ウルガモス」に思い入れがなければ生まれないアイデアだと感じた。
ポケモンをはじめとしたアニメ系のグッズやコラボ商品といえば、ひと昔前まではキャラクターの絵が大きくプリントされたものが多く、グッズそのものよりもキャラクターの絵がフィーチャーされたものが多かった。
「アニメの絵を載せただけじゃ、絶対売れないからな」。これは、徳島市のマチ★アソビ(※1)で販売するアニメとのコラボ商品の説明会でアニメ制作会社「ufotable」の近藤社長が参加者に突きつけた言葉だ(※2)。商品とキャラクターが結びついてこそ、ファンが求める(≒売れる)グッズ、コラボ商品が出来上がるのだ。
最近のアニメグッズやコラボ商品の特徴として、キャラクターやアニメの世界観を反映したデザインが施されている商品が出てきていることが挙げられる。特に、女性向けのアパレルやアクセサリーのグッズではこの特徴が顕著であり、高価格帯でクオリティの高い商品も存在している(※3)。
近年、こうしたアニメ関連のグッズを集めることは「推し活」の代表行動の一つに分類される。矢野経済研究所の推計によると、主要16分野の「オタク」市場のうち、2024年度の「アニメ」分野の市場規模は3,500億円と予測され、主要16分野の中で最も大きい市場となっている(※4)。SNSの普及により、ファンコミュニティの形成が容易となり、ファン同士が気軽に交流できるようになっていることも「推し活」の活況を後押ししている。ファンコミュニティは好きなキャラクターや作品の感想を語り合うだけではなく、集めたコレクションを発信する場でもある。キャラクターや作品に対する自身の熱量をアピールし、承認を得ることで「コト消費」にもつながっているのである。
昭和や平成の時代では、サブカルチャーに位置づけられたアニメ・漫画といったいわゆるオタク文化は、令和の現在では、もはやメインカルチャー化しているといっても過言ではない。今やアニメ・漫画を嗜むのは、かつて「オタク」と呼ばれた特定の層だけではない。老若男女問わず多くの人々がアニメや漫画をライトに楽しんでおり、さらには動画配信サービスを通じて、海外にも広がっている。
アニメファン層が広がり続ける中、単にキャラクターが大きくプリントされたグッズでは、消費者の購買意欲を満たすことは難しくなっている。商品とキャラクターが結びついたクオリティの高いグッズを購入する「モノ消費」に加えて、ファンコミュニティでの承認や、誰か(何か)を推すことで精神的に充足する「コト消費」により、さらなる「モノ消費」への欲求が加速し、より質の高いグッズが売れる循環がつくられる。ウルガモスのサンキャッチャーのような商品を輩出し続けることができれば、「推し活」市場は今後も拡大を続けていくだろう。
(※1)徳島市で開催されていたアニメやゲーム、漫画などエンターテインメントが集う西日本最大級の総合イベント
(※3)例えば、アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」とSAMANTHAVEGAのコラボコレクションはキャラクターやそのモチーフ、作品の世界観を落とし込んだ商品の典型だろう。
(※4)(株)矢野経済研究所「オタク」市場に関する調査(2024年)(2025年2月5日発表)
注:一定数のコアユーザーを有するとみられ、「オタクの聖地」である秋葉原などで扱われることが比較的多いコンテンツや物販、サービス等を指す。本調査では、「アニメ」「漫画(電子コミック含む)」「ライトノベル」「同人誌」「スマートフォンゲーム」「インディーゲーム」「プラモデル」「フィギュア」「ドール」「鉄道模型(ジオラマ等周辺商材含む)」「トイガン」「サバイバルゲーム」「アイドル」「プロレス」「コスプレ衣装」「メイド・コンセプトカフェ、コスプレ関連サービス」「音声合成」「ボーイズラブ」「2.5次元ミュージカル」の主要16分野を対象とし、各々の市場規模を算出している。
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