新マイナポイント制度の「利得性」の先に「利便性」はあるか?
2021年11月30日
政府が2021年11月19日に閣議決定した「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の中に、「新マイナポイント制度」(マイナポイント第2弾)が盛り込まれた。これは、2020年9月に始まった現行のマイナポイント制度の後継と位置づけられる。
現行制度は、キャッシュレス決済を利用することで一人当たり最大5,000円相当のマイナポイントが付与されるという仕組みであった。これに対し、新制度では、現行制度の申し込みの有無によって付与されるポイント額が異なり、現行制度を申し込んでいない人は最大2万円相当、現行制度を申し込んだ人は最大1万5,000円相当のマイナポイントが付与される予定だ。
今回の制度に関して、筆者は特に、①新型コロナ対策、②マイナンバーカードの普及拡大、③キャッシュレス化を含む国全体のDX推進、という3つの点で効果が期待されると考えている。
まず、新型コロナ下で厳しい経済状況にある人は、手間はかかるが確実に金銭的恩恵を受けられる制度として、前向きに利用を検討するのがよいと考える。2人世帯で最大4万円、3人世帯で最大6万円相当というのは必ずしも十分な額と言えないかもしれないが、今冬は厳しい「値上げの冬」で生活費がかさむと見込まれる中、その影響を多少は緩和してくれるだろう。
次に、総務省によると、マイナンバーカードの普及率は2021年11月時点で39.1%であるが、それを一段と引き上げる効果が期待される。現行制度が開始した2020年9月時点の普及率は19.4%であったが、マイナポイントの付与が国民のマイナンバーカード取得を後押しし、その後14ヵ月で普及率は20%ポイント弱も上昇した。新制度の方が現行制度より付与されるポイント額が大きく、そのことが普及率のさらなる上昇に寄与すると考えられる。
最後に、新制度では、健康保険証としての利用登録を行うと7,500円相当、公金受取口座として銀行口座を登録すると同じく7,500円相当のマイナポイントが付与される。これを機に、マイナンバーカードに健康保険証と銀行口座を紐づける人が増えれば、将来的な国民生活と行政手続きのDX化にも資するだろう。
このように見てみると、新マイナポイント制度は全体的に前向きな効果が期待できる制度のように映るかもしれない。しかし、うまい話には裏があるというように、その原資は国民の貴重な税金で賄われていることを忘れてはならない。
目先のポイント付与によって国民のマイナンバーカード等への関心を一時的に高められたとしても、その後、国民が利用して便利だと感じられなければ、それをDX推進につなげるという政府の目論見は絵に描いた餅で終わる可能性がある。厳しいシナリオとして、将来の国民に残ったのは、あまり使われないカードとシステム、そして借金という未来も考えられる。
新マイナポイント制度の終了後、こうしたシナリオを回避するためには、国民にポイント付与という「利得性」ではなく、日常生活での「利便性」をいかに訴求できるかが重要な鍵となろう。
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