21年、夏休み明けの休校が子を持つ共働き世帯に与えた影響は?

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2021年11月01日

  • 矢澤 朋子

昨年の春、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により全国一斉休校が実施され、共働き世帯の雇用(特に女性)に大きな打撃を与えた。学校再開後はどの学校も手探りの状態で登校(授業)を開始し、徹底した感染拡大防止策を実施しつつ、子どもたちの学びを継続しようとしてきた。

ただし、今年8月半ば以降の新型コロナウイルス感染症新規陽性者数(以降、陽性者数)の急激な増加、10歳未満や10代の陽性者割合の上昇に伴い、夏休み明けの学校における感染拡大が危惧された。昨春に発生した共働き世帯に対する影響を避けるため、政府は休校するかどうかの判断を各自治体に委ねた。筆者の子どもが通う小学校では、8月末の夏休み終了後は2週間の休校となったうえ、その後2週間は登校もしくはリモート授業のいずれかを選択しての短縮授業が実施された。この夏休み明けの対応は、子どもを持つ共働き世帯へどの程度の影響を与えたのだろうか。

比較のためにまず昨年の状況を振り返ってみると、20年3月初~5月末まで全国一斉休校が実施された。7~12歳の末子を持つ共働き世帯は20年4~6月期(平均)に前年比で25万世帯減少したうえ、共働きでも妻が休業者である世帯が同11万世帯増加した(※1)(下図(左))。一方、終日一人で過ごしても問題のない年代ということからか、13~17歳の末子を持つ共働き世帯は前年から変化はなかった(ただし、妻が休業者である世帯は同5万世帯増加した)。下図(右)からもわかるように、休校の影響を大きく受けたのは子を持つ共働き世帯の中でも7~12歳の末子を持つ共働き世帯であった。

7~12歳の末子を持つ共働き世帯/共働き世帯の推移

今年の状況を見てみると、9月1日時点で公立小学校で「夏季休業の延長または臨時休業」を実施(予定含む)した設置者(教育委員会)は全国の12.4%にとどまった(※2)。休業するか否かの判断が各自治体に委ねられたことで、影響を受けた世帯が大幅に縮小した。加えて、休業期間は平均4.7日間であり、就業を諦めなくとも対応できる程度であったといえる。各自治体がそれぞれの地域の状況を総合的に判断し、影響を最小限に抑える努力をしたことで、全国的に昨年より陽性者数が多い中でも7~12歳の末子を持つ共働き世帯への影響がそれほど大きくならずに済んだと考えられる。同様に公立中学校や公立高等学校で休校が実施された教育委員会は、それぞれ12.8%、19.2%にとどまった。

よって、今年の夏休み明けの公立学校の休校によって子を持つ共働き世帯数が大きく減少することは避けられたと推測される。ただし、7~12歳の末子を持つ共働き世帯数は、21年4~6月期時点でコロナショック前の19年10~12月期の水準には戻っていない。「またいつ休校/学級閉鎖/リモート授業になるかわからない」という不安から妻が就業を断念した可能性もあろう。やむを得ず就業を諦めている母親に再び労働力に転換してもらうには、コロナ禍においても子どもが常に安心して登校できる状態にすることが必要であろう。限られた人員で新型コロナ感染対策と子どもの学びの両立に尽力している教育現場に対し、政府には補助要員の設置や増員などを含めたより一層のサポートを期待したい。

(※1)出所:総務省「労働力調査(詳細集計)」

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