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「公的年金」の名前を変えたら、あなたは何歳から「年金」を受け取りますか?

2020年11月05日

政策調査部 主席研究員 土屋 貴裕

米国人に対して公的年金のことを話題にしようとするとき、“Public pension”という言葉は通じにくい。公的年金に相当するものは「ソーシャルセキュリティ(Social security)」であって、“Public pension”ではないのが一般的な理解のようだ。給料から差し引かれるのは、「ソーシャルセキュリティ税」という言葉を使うからかもしれない。ちなみに“Pension”は私的年金のことを指すようで、事実上、確定拠出年金の代表である401kプランと同義になっている印象である。

日本ではどうだろうか?「年金」と聞いてイメージされるのは厚生年金などの公的な年金だろう。しかし、公的年金と私的年金の持つ性格は異なるにもかかわらず、同じ「年金」という名称を使うことが、公的年金の持続性や負担と受給を巡る格差等において、様々な誤解や混乱を生じさせるきっかけになっているのではないだろうか。公的年金は自分が積み上げた資産を徐々に取り崩していくわけではなく、現役のうちに保険料を納めて受給権を得れば、一生受け取り続けられる。自らの寿命がいつ尽きるかわからないことに備える長生き保険なのである。これを民間企業が提供するのはなかなか容易でない。

ところが、「公的年金はいつ破綻するか分からないから、なるべく早く受給し始めるべきだ」、「繰り下げ受給を選択した場合、〇〇歳まで生きないと受給総額がプラスにならない」といった意見が散見される。自分が支払った保険料の総額と年金として受け取る総額のどちらが多いか、という損得勘定が議論の対象になっていることは、保険として認識されていないことの証左であろう。保険だから受け取る総額が払った総額とそのまま連動しないのは当然である。事故や病気に備えて支払った保険料が、健康なままであったので無駄になったとしても、損だとは考えないだろう。

米国で私的年金と公的年金とが明確に分けて考えられているように、日本の公的年金制度への誤解を減らすには「年金」という名前を変えて、保険であることをより強調したらどうだろうか。例えば、公的年金は「長生き保険」あるいは「終身所得補償保険」などという具合である。長生きした時の保険であることを理解してもらえれば、誤解に基づく保険料滞納などが減るだろう。勤労所得と私的年金との役割分担を検討していつまで働くか、私的年金をどのように利用するか、そして長生き保険をいつから利用するかを組み合わせて考えることで、引退した後の生活が豊かになるだろう。

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