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上場子会社の少数株主保護、来年3月施行予定の改正会社法対応でも

2020年10月22日

金融調査部 主任研究員 横山 淳

2020年9月1日から30日にかけて、会社法施行規則などの改正案に対するパブリック・コメント手続が実施された(※1)。これは2019年12月の会社法改正を受けて、その細目を定めるものである。これに伴い、施行日が2021年3月1日の予定である旨も明らかにされている。企業法務の関係者にとっては、いよいよ2019年改正対応の準備期間に突入したといえるだろう。

会社法施行規則の改正案には、2019年改正を踏まえた株主総会参考書類や事業報告の開示内容、例えば
・社外取締役の選任議案を提出する場合に、株主総会参考書類に、その候補者に期待される役割を記載する
・事業報告に、社外取締役が果たすことを期待される役割に関して行った職務の概要(要するに、社外取締役がその期待される役割を具体的にどのように果たしたのか)を記載する
・役員等の選任議案を提出する場合に、株主総会参考書類に候補者と締結している、又は締結を予定している補償契約や役員等賠償責任保険契約の内容の概要を記載する
といった企業法務にとって重要な内容が含まれている。

改正事項の中でも、筆者が特に注目したのは、上場子会社における少数株主保護の議論等を踏まえた開示の充実が盛り込まれていることである。具体的には次の通りである。

◇株主総会参考書類における役員(取締役及び監査役)候補者と親会社等との関係に関する記載事項を拡充する(過去10年(現行5年)まで遡って関係の有無を確認する)

◇事業報告において、当該株式会社に親会社がある場合において、当該親会社との間に当該株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在するときは、その内容の概要を記載する

上場子会社におけるガバナンスの問題は、昨年、経済産業省が策定した「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」でも取り上げられているほか、現在、東京証券取引所の「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」においても審議が行われている。さらに、今後、コーポレートガバナンス・コードの見直しの議論の中でも取り上げられることが見込まれている。

とりわけ、親会社と子会社の双方が上場している場合(親子上場)、例えば、親会社グループの全体最適のためにグループ事業の再編を行うと、子会社及びその少数株主にとっては不利益となってしまうなど、親会社の一般株主と、子会社の少数株主との間での利益相反が生じる事態に陥った場合、どちらも保護が必要とされる株主である以上、一方の利益を他方の利益よりも優先する判断を行うことは至難である。正解のない至難な判断が求められる以上、判断プロセスの透明性と公正性を確保するため、コーポレート・ガバナンスの強化が要求されるのは、必然的な流れであると筆者には思われる。

予定通り、会社法施行規則が改正されれば、会社法上の株主総会参考書類や事業報告を通じても、上場子会社(親子上場)に関する開示が求められることとなる。そして、株主総会参考書類や事業報告で開示が行われる以上、株主総会において、株主から関連する質問を受ければ、回答しなければならないこととなる。

上場子会社(親子上場)そのものが禁止されることまでは、当面、ないものと推測される。しかし、上場子会社(親子上場)を維持する場合、これまで以上に、様々な場を通じて、十分な説明責任を果たすことが求められることは避けられないだろう。

  • (※1)https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080224&Mode=0

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金融調査部
主任研究員 横山 淳